「先代の猫」
東京藝術大学で授業をしていた頃、春から秋にかけては、上野公園の東京都美術館の前で飲んでいた。
寒くなると、根津の車屋に降りていく。
下の木のテーブルのあたりが、ぼくたちのお気に入りで、わいわいがやがや芸術論を闘わせていた。
昨日、植田工の「シシューポスの神話」の展示があるというので、上野桜木町のギャラリーに行って、そのあと、みんなで、久しぶりに車屋に行った。
ひょっとしたら、数年ぶりになるのではないかしら。
車屋には、白猫がいた。昨日入ったら、また別の猫がいて、ああ、代替わりしたんだな、と思った。階段のところに、先代の猫の写真が張ってある。なつかしいな、と思いながら見ていた。
酔っ払って、外に出て、戻ってきたときに、今の猫がすりよってきたので、おお、よしよし、と撫でていて、あれっ、と思った。
ひょっとして・・・
マスターにうかがったら、そうだった。元々の猫が、そのまま生きていたのだ。
「いくつですか?」
「こいつ、18歳になります。」
ひええ、長生きな猫くん。そういわれて、よく見ると、白くてもこもこした毛、間違いない。先代だ!
代替わりしたと思っていたら、猫はそのままだった。
変わったのは、おれたちだけか。
久しぶりに飲む車屋のビール、そして日本酒の味は格別で、また近々来たいなあ、と思った。
「先代の猫」が、「現役」のままがんばっているんだから、ぼくたちもまた、青春を貫かねばなるまい!
10月 30, 2014 at 08:20 午前 | Permalink
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