おじさんは、通過儀礼をくぐりぬけた青年のような顔をしていた。
人間の脳は、予想をしないものを見ると、前帯状皮質(Anterior Cingulate Cortex)が活動する!
さきほど、暑いなか走って、汗だくのままコンビニに入り、飲みものをカゴにいれてレジに並んでいた。
そしたら、前に立っていたおじさんが、大切そうに一冊の雑誌を持っていた。カバーのタイトルだけしか見えなかったのだけれども、どうも、「アジア女性」と書いてあるような気がする。
「アジア女性」?
そんなタイトルの雑誌が、世の中に存在するとは、想像もしなかった。
アジア女性!
カバーには、なぜか編み目状の黄色いゴムがかけてあり、どんなデザインなのか、よく見ることができない。
おじさんの順番が来て、レジに進むと、おじさんは、なぜか、表紙を下にして差し出したので、やっぱりよくデザインが見えない。
レジのおばさんは、雑誌を受け取り、手慣れたように黄色いゴムを外すと、いつもよりも明らかに少しだけ強い口調で言った。
「あの、袋に入れますか?」
一方、おじさんは、なぜか、か細い声で言った。
「あ、はい。」
地球を訪れている火星人ならば、このわずか十数秒のやりとりの中に、無限の人間ドラマ、人生の機微を読み取るに違いない。
雑誌「アジア女性」を無事袋に入れてもらったおじさんは、ほっとしたように店の外に出て、しばらく太陽の下で立ち尽くしている。
なんだか知らないけど、ヨカッタね。
ぼくが支払いを済ませて店を出ると、おじさんはもう乗ってきたバンの運転席にいた。
気のせいか、おじさんは、通過儀礼をくぐりぬけた青年のような顔をしていた。
7月 11, 2013 at 09:01 午前 | Permalink
最近のコメント