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2013/06/13

東大法学部「分割」「民営化」案について

日本の教育改革について考えています。
それで、いつも東大のことばかりと言われるかもしれないけど、母校だし、予算規模も大きいし、ある種象徴的な存在なので、ご容赦。

一つの考え方として、東大法学部の「分割民営化」を提案します。これだけでは、何を言っているかわからないですよね。以下、簡単に説明します。

東京大学は、明治以降の日本の近代化を担う「文明の配電盤」でした。その中でも法学部は、官僚を輩出する、いわば「東大の中の東大」でした。

ところが、グローバル化などの状況の変化によって、法学部が、「お荷物」になってきたように私は感じます。

法学部のカリキュラムは、比較法学やローマ法、法制史などの科目はあっても、やはり日本の実定法中心。すると、国際的な学生構成にするのは難しい。

霞ヶ関や、司法中枢との強固な結びつきは東大法学部の最大の売りでしたが、グローバルな大学競争時代には、ヘタをすれば「不良資産」になりかねません。

Times Higher Educationなどが出す大学ランキングがすべてではないですが、グローバルな大学競争時代における一つの方向性ではある。そして、東大は、法学部があることで、大学ランキングが上がるよりも、どちらかと言えば下がるでしょう。

これは皮肉なことです。東大の文系学部の中で、法学部(文I)はずっと選民意識というか、自分たちこそ東大だ、という認識を持ってきたように思います。ところが、ふり返ってみると、文II(経済学部)、文III(文学部やその他学際的な科目)の方が、現状はどうであれ、実は学問のあり方としては国際化、グローバルな体制がとりやすい。

法学部は、あまりにも日本の実定法、そして国家との結びつきが強かったがために、かえって国際化が難しい。だから、このままでは、東大の不良資産になります。

もちろん、社会の成り立ちを支える法学自体には、輝かしい未来がある。どのような制度設計がイノベーションを起こし、フェアな社会につながるかという社会工学的なアプローチ、Lawrence Lessigが研究しているような、インターネットと法秩序の関係性、さらには規範意識や、刑罰などの認知的アプローチなど、興味深い研究分野はたくさんあり、国際化も可能でしょう。

そのような学問を大いにやる「東京大学法学部2.0」ができれば、そこには明るい未来がある。

このような現状認識に基づき、私は東大法学部の「分割」「民営化」を提唱するわけです。

まず、「分割」ですが、現在の法学部のカリキュラムの中心をなす日本の実定法に関する授業を、切り離して、法科大学院の方に移す。その代わりに、国際的な視点に立って興味深い新しい法学の科目を、リベラル・アーツ教育の一環として提供する。
学部の時から日本の実定法を学びたい人は、法科大学院の科目も履修できるようにする。

そして、「民営化」ですが、学部のraison d'etreとして、国家との結びつきが強すぎることを改める。必ずしも、国立大学法人ではなくなる、ということを意味するのではありません。もっと学問としてのindependenceを高める。

東大法学部「分割」「民営化」というと、一見センセーショナルな印象がありますが、実際に含意されていることは、以上のことです。

そのくらいの思い切ったことをした方が、東大も、法学部も、そして日本の教育全体も輝くと私は考えるのです。

2013年6月13日 茂木健一郎

6月 13, 2013 at 10:00 午前 |