ジェニファーの前に立ったときの、ああ、もうオレはダメだ、これから破滅する、みたいなあおざめた感じ
きのう、MITのメディアラボでのこと。
いろいろなひとと議論したけど、その際、時々カメラが回った。(BS日テレ『Tokyo Designers Week.tv 茂木健一郎の発想の種』の取材である!)
それで、ジェニファーに話を聞くというので、マイクをつけて、カメラの江田さんがスタンバイして、さあ、そろそろ、という時に、私の腹部に異変が起こった。
そうですね、つまり、例の、おならの前兆現象ですね。
こまったなあ、と思った。ジェニファーは、やる気満々のアメリカ人女性。
そのジェニファーの前で、ぷうはいかにもマズイ。
しかも、テレビの収録中だし。
しかし、ああ、なんてこった。もう、カメラが回り始めてしまった。今さら、これからトイレにいってぷうしてきます、なんて言えない! ぼくは覚悟を決めて、えいやっとスポットの中に飛び込んだ。
案の定、ジェニファーは、もうとってもにこやかにそしてアグレッシヴに、自分の研究を語っている。
ぼくは、ああ、そうなんだ、へえ、ここはどうなの? みたいなことを言いながら、その実、おなかを気にしている。
そんな間も、おなかの膨満感は、黒雲が動くごとく、時には強く、あるいは揺らいで、あっちにいったりこっちにいったり。
ぼくはそんなおなら前兆現象をスタッフたちやジェニファーに悟られないまいと、心頭滅却すれば火もまた涼しとばかりに、落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせたのである。
するとどうだろう、諸君! 奇跡が起こった! おなかの膨満感がすっと去って、ぼくは、ジェニファーとの議論に集中することができたのである。
撮影が終わって、ぼくはさりげなくトイレに行って、マイクのついたジャケットをうまく外して(これがむずかしいんだよね)、ぷうぷうした。
マイクの発信器を、ズボンのベルトから外して、スイッチをオフにすることを忘れなかったことは言うまでもない。(そうでないと、ぷうぷうが音声の福原さんに実況中継されてしまうからね。)
そしたら、ついでに、固体も出た(きたなくてごめん)。
時差のせいもあって、へんな時間にへんなことになったのだろう。
そして、さり気なく現場に戻ったのである。何事もなかったかのように。
(夜、ボストンの中華街で川又さんや安藤さん、江田さん福原さんとごはん食べているときに、こんなことがあったと、ばらしちゃったんだけど。いやあ、オレって、正直モノだから。)
今こうやってふり返ってみても、うまく切り抜けたと思う。
自分で自分をほめてやりたい。
でもね、ジェニファーの前に立ったときの、ああ、もうオレはダメだ、これから破滅する、みたいなあおざめた感じは、はっきり心に残っている。
それは一つの忘れがたきクオリアであった。
6月 1, 2013 at 08:00 午後 | Permalink
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