駅です!
ホテルを出るのが、案の定ぎりぎりになって、さあ、と道の上に立ったら、どっちが駅なのか、じぇんじぇんわからない。
これはお上りさんの悲哀なのかもしれないけれども、大阪の駅はわからないことが多い。駅舎の中も外も。梅田なんて、行くたびにどこが阪急でJRで阪神なのか、じぇんじぇんわからない。
ホテル、新大阪の駅から至近のはずなのに、どっちに行けばいいのか、わからない。
こっちかな、と歩いたら、すぐに交差点に出た。そうだ、困った時のiPhoneグーグルマップ。確かに、駅が近くにある! すぐそこにある! ところが、どっちがその方向なのか、じぇんじぇんわからない。
やべ、と思った。このままでは、いわゆる一つの乗り遅れる。
近くを見たら、おじさんがいたけど、イヤフォンしてる。ちょっと話しかけにくい。
そしたら、その後ろに、自転車に乗ったねえちゃんがいた。ちょっと恥ずかしいけど、もう切羽詰まっているから仕方がない。
「あのう、新大阪の駅はどっちでしょうか?」
ねえちゃんは、はあ、みたいな感じでこっちを見る。そうだよね。ものすごく近いことはわかっているんだ、ただ、その近いが、どっちの方に近いかがわからないんだ。
「あちらに歩けばありますけど。」
「あっちに行けば、新大阪の駅があるのですか?」
「駅です!」
最後の、「駅です!」という言葉が、まるで、「以上、報告終わり」みたいな感じに聞こえた。
そうか、駅なのか。きっと、ねえちゃんにとっては、「太陽です!」と同じくらいの真実なのだろう。
信号が青に変わり、だーっと走っていったら、それでもよくわからない。
あのさ、新大阪の駅って、ぺっちゃんこというか、ただホームの屋根があるだけで、ぜんぜん、ターミナルビルとかそういうランドマークがないんだよね。だから、すぐ近くにいても、気配が消えているというか、マジでわからないのだ。
おまけに、道路が、へんな角度で交差していたりして、そこから行くのに地下を通ったりして、意味不明。お上りさんとしては、ちょっと意地悪されているような気分になる。
やっと新幹線の改札が見えてきたときには、本当にほっとして、ぼくは、あの「駅です!」というおねえちゃんを信じて走ってきた良かったな、と思った。
それにしても、「駅です!」と言われたとき、ぼくは、見当識を失った冬眠明けのくまみたいに感じたのである。
5月 17, 2013 at 08:55 午前 | Permalink
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