軌道修正してよかった。途中で気づいてよかった。
最近のある日のできごと。
ある業界の方々が集まる場で、私が、講演をさせていただいていた、と思いねえ。
それで、脳は楽観的な方がよく働く、という趣旨の話の前振りで、最近の「アベノミクス」の話をしていた。
「いやあ、ねえ、失われた20年とか言っていたのが、アベノミクスで、株価が上がったら、なんだか人々の気分も変わって、いやまて日本もできるぞ、みたいな雰囲気になってきたではないですか。これですよ、これ。アベさんの政策については論争があるんでしょうけど、人間がいかに気分に左右されやすいかっ、っていう・・・」
そんなことを言いながら、私は、さり気なく聴衆の様子を見ていた、と思いねえ。
さて、ここで、人間の脳の働きについて、一つの事実をお伝えしなければならない。
意識に上るプロセスは、ごく一部である。無意識の中には、さまざまな計算が、並列して走っている。
「アベノミクスいいね」みたいなことを言いながら、私の無意識の中で、どんな計算処理が進んでいたか。
(あれっ・・・そういえば、この業界の人たちって、素材を輸入したりするんじゃなかったっけ・・・アベノミクスの下、円安になっているよな・・・すると、この人たちは、原料代が値上がりしていたりして・・・するってえと、アベノミクスで恩恵を受けている、というよりは、むしろ・・・)
おそらくは、無意識のうちにこのあたりまで情報処理が進んだ時点で、「!」。前頭葉の前帯状皮質が活動し、その情報が背外側前頭前皮質に送られ、アラームセンターから脳の司令塔への黄金のリレーが完成し、私の意識は「びくっ!」となった。
(あれ・・・、この話の流れ、実はやばいかも・・・)
みたいな思いが、話を進めながら、急速に私の意識の中に上がってきたのであろう。
「あのう・・・・ひょっとして、私、地雷踏みつつあるかなあ」というと、聴衆の一部がくすっと笑った。
「もしかすると、みなさんの場合、アベノミクスで恩恵があるというよりは、とばっちりを受ける側なのでありましょうか・・・」
と言ったら、場内が大爆笑。
どうやら、その爆笑は、蓄積していた懸念、気まずさのようなものが一気に開放されたような、春になって花がいっせいに咲くような、そんな風に感情がふくらんだのであろう。
軌道修正してよかった。途中で気づいてよかった。
私は、思いが通じたほっとした気分の中で、講演を進めていったのである。
5月 30, 2013 at 08:58 午前 | Permalink
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