「不幸中」という文字列の中には「幸」が隠れている
あのさ、命を脅かすような状況って、不気味な雰囲気があるって言うじゃない?
昨日、それを感じたんだ。ところが、ぼくがうまく拾えなかったんで、悲劇が起こった。
あるところでの仕事。その前に、カレーを食べた。それで、よせばいいのに、また、「おなら」のもとであるらっきょを、好きだというので、たくさんあるだけ食べてしまった。
どうやら、お腹が本格的な活性期に入っているらしい。どうも、ぷっぷ ぷっぷと出る。まさか、食べたばかりのらっきょのせいではないだろうけど。
それでさ、次の仕事は、スタジオで籠もりっぱなしになるので(つまりラジオの収録ね!)、その前に、トイレに行って、そのなんだ、「ガス抜き」をして置こうとおもったわけだ。スタジオに臭気が充満! みたいな悲劇は、避けたいからね。
男子トイレに入り、個室の便器の中をみたとき、あとから思い起こせば、そこには不気味な雰囲気が漂っていた。たまっている水の量は普通に見えたのだけれども、なぜか、トイレットペーパーの細かい切れ端みたいなのが、たくさん散らばっていた。昔子どもの頃に流行った、敵が来たら水に投げ込むと溶けてなくなるスパイ用のメモ用紙の残骸みたいな。溶ける途中だけどまだ繊維のかけらがあちらこちらにある、みたいな、微妙な残り方をしていたのが今考えればヘンだった。
そこで、私に危機を察知する能力があれば、これから起こる悲劇は、避けられたのだろう。私は、個室のドアを閉め、リュックを隅に置いて、何気なく、「流しておくか」みたいな感じで、レバーを押したと思いたまえ。
ぶくぶくぶく。。。
そんな音は実際にはなかったと思うけど、心の中では聞こえたんだよね。便器の中の水位が、じゅわーっと上がり始めた。
脳が稲妻を受けた!
これは来る!
と思うまもなく、水が便器の端を越えてあふれ出すまでほんの2、3秒。私は、おもわずうあっと足を上げ、個室の隅にあったリュックをつかみ、迫り来る水からさっと身をかわすと、ほうほうの体で逃げ出した。
情けないんだよね。ああいうとき、逃げ足だけは早いんだよね。いや、でも、奇跡的にリュックも靴もぬれなかったんだよ。
それから、私はトイレに戻るのがこわくて、ぶるぶる震えながら、ほかの方法で(つまりフロアを歩いて)おならをぷって出して、圧力を下げ、それから何食わぬ顔をしてスタジオに行った。
あとでディレクターから聞いた。「このフロアのトイレ、閉鎖されています。他のフロアに行けって言われたのは、初めてですよ。」
ご、ごめんなさい! 半蔵門、FM Tokyo の8階フロアで働くみなさん。昨日の午後、トイレの水をあふれ出させたのは、ぼくです! ここに、告白して謝罪します。ぼくの前にすでに事態は悪化していて、ぼくはただ、最後に、レバーを押しただけなのですが。。。。すぐに対応すればヨカッタのでしょうが、現場から逃げ出してしまいました。もう収録時間が迫っていて、ゲストの畠山美由紀さんも入っていらしたし、切羽詰まって逃げ出してしまいました。ごめんなさい。
収録を終え、トイレにおそるおそる行ってみたら、8階トイレはウソのようにきれいになっていた。掃除の方、ごめんなさい。そして、ありがとう。
人生の教訓。これからは、便器の中の水が不気味な表情を見せているときには、安易にレバーを押さないようにします。あの水の表情のクオリア、しっかり頭にたたき込みました。
Tokyo FMを出て、次の現場で会った人に、「こんなこわいことがあった」と話したら、その人は、「ウンコする前でヨカッタですね」と言った。
うーん、確かに! それは一つの、冷静な判断ですね。
確かに。もし「その後」だったら、もっと阿鼻叫喚の地獄絵が展開していたことだろう。よかった。前でよかった。それは、不幸中の幸いであった。「不幸中」という文字列の中には「幸」が隠れていると、今気づいたよ。
5月 16, 2013 at 08:46 午前 | Permalink
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