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2013/05/24

ぼくのじゃないのに、スミマセンって言っちゃった。

白洲信哉が京都で待っているのに、品川から乗るのが遅くなった。

そもそも、信哉からもらった回数券を入れて、席を指定したら、なぜか、30分後の新幹線がでてきた。
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一瞬、見当識が失われて、電光掲示板を見ても、次のも次のもその次のも空席あるし、なぜだ! と考えてたら、ぼくがバカだった。つい、いつもの癖で、東京発のやつを指定してしまったのだ。

機械は思っていたに違いない。

「ぷっ。こいつ、バカかよ。今品川にいるのに、わざわざ東京発の新幹線指定しようとしている。山の手か何かでいったんもどって来るつもりか。こいつひょっとして鉄ちゃんかよ。今品川にいるんだから、ここから乗った方がラクですよ、と教えてやろうか。まあ、いいや。30分後の東京発のやつを、指定してやろ! ほな、さいなら」

見たいな感じで、ぴーっと指定券がはき出されてきた。そして、ぼくはトラブった。

改めて機械で指定しなおそうとしても、うまくいかない。拒否られるのだ。

仕方がなく窓口にいったら、ややこしいおじさんがややこしい切符の処理をしていて、随分待たされた。

それでね、ダメなやつのところには、妙なトラブルが集まってくるのよ。

やっと席に座って、ほっとして、さあ、リラックス、と思ったら、不思議な事象が発見された!

なんと、私の席の足もとに、ゴミがたくさん入った白いコンビニ袋があったのだ。

はてな、と思った。完璧で知られる新幹線のお掃除の方々が、見逃した、なんてことがあるはずがない! なんで、東京駅を始発で出たばかりの新幹線の、私の席の下に、ごみがごちゃごちゃ入ったビニル袋があるのかっ!

疲れていたし、ちょっと頭の回転がスローなブギにしておくれになっているから、呆然と眺めてみると、前の席に座っているおばさまが、不思議な行動を取り始めた。

あれっ、みたいな感じで、自分の右肩の方をみると、手をのばして、後ろに座っているぼくの席の方をごそごそし始めたのだ。

それからが、すごく奇妙な間合いとなった。おばさまの手が、ぼくの足もとに落ちているゴミ袋に手が届いたその瞬間、ぼくは、なぜか「すみません!」と言ってしまったのだ。

そしたら、おばさまが、「はっ」という感じで、手を引っ込めてしまったのである。

ぼくはどうもぼんやりしていたのだけど、つまり、こういうことですね。

おばさまが、となりのおじさまと、東京駅を出るあたりから弁当を食べ始めた。それで、その弁当のクズをいれたビニル袋が、何かの拍子に、ぼくの席の方に落ちた。それで、おばさまが、それを回収しようとしたら、ぼくが、なぜか、「すみません!」と言ったので、おばさまが、ひええ、とばかりに手を引っ込めちゃったんだ。

ぼくのじゃないのに、スミマセンって言っちゃった。

なぜ、ぼくは、自分のゴミでもないのに、「すみません!」とあやまったのだろう。

なんだか、責任を感じちゃった、というか、ぼくの足もとにゴミがあるのがごめんなさい、というか。

それで、おばさんは、回収しようとしたら、ぼくが、タイミング悪く「すみません!」と言ったもんだから、あたかも、ぼくがゴミ袋について所有権を主張しているように感じて、それで引っ込めてしまったんだろう。

間合い悪すぎるよね。

ぼくは、困って寝たふりをしていたら、いつの間にか本当に眠ってしまった。

はっと気づいたのは、名古屋前。いつの間にか、ぼくの足もとのゴミ袋は消えていた。おばさまが、こいつが眠っているうちに、と回収したのだろう。

ところが、弁当の包み紙の欠片みたいな、赤い帯が一個まだ足もとに落ちていた。きっと、おばさまが回収する時に、ビニル袋からこぼれ落ちたのだろう。

ぼくとおばさまの間に残された、一本の赤い帯。小説ならば、ここから胸が躍る物語が始まるのだろうけれども、クオリア日記はここで唐突に終わります。

5月 24, 2013 at 07:37 午前 |