Long Timesの時計、買っておけば良かったな。
昨日、3331で週刊現代の取材を受けていて、(デスクにボツにされなければ来週号に出ると思います
←なんじゃこりゃあ、このもじゃもじゃの脳科学者の話、全く使えないじゃないかあ! 差し替えだ、差し替え。例のおじさんが美女と行く温泉の、ストック記事に差し替えとけ! みたいなイメージ)センスを磨くためには、いい人悪い人、やさしい人いじわるな人、いろいろな人に会わなくてはならない、みたいなことを言っていた時に、実は思い出していたことがある。その時は、記者の平野友季さんに言う暇がなかったので、ここに書く。
あれは中学二年生くらいだったか、一人で留守番していたら、とつぜんおじさんがきた。玄関に来て、ささやくような声で、「ぼうや、おうちに一人? そうかあ。おじさんさあ、時計をつくる会社につとめているんだけどさ、ちょっと、時計、もってきちゃったんだ。すごく高級な時計なんだけど、おじさん、これ、安く売っちゃおうかな、と思って。ぼうや、お小遣いない? すごく高級な時計なんだけど、ぼうやだったら、1000円でいいや。」
中二でも、そのおじさんすごく高級、じゃなくて、すごくあやしい、ということはわかった。
おじさんは、「ほら、これが、その高級な時計だよ」とぼくの顔にひっつくくらいの距離で見せてくれた。
その文字盤に、書かれていたロゴをぼくははっきり覚えている。
Long Times
ずっと後になって、あの時、おじさんはLongines と間違えて買っちゃう人が出ることを期待していたのだ、と気づいた。
それにしても、あの時のおじさん、ひたむきだったな。なんというか、エネルギーに満ちていた。あれは、人を騙そう、というエネルギーだったのだろうけど。
「お小遣いないから」と断ったら、おじさんは案外あっさり帰って行った。実はちょっと、寂しかった。
今でも鮮明に覚えている、不思議な時間。そして、今になって思う。あの時、千円出して、Long Timesの時計、買っておけば良かったな。
それで、昨日、週刊現代の平野友季記者に言いたかったことは、人間、詐欺師やペテン師や結婚詐欺師みたいな人に出会ってこそ、ああ、世の中にはこういう人もいるんだ、と学んで、初めてセンスが磨かれるのだ、ということでした。
純粋培養はアブナイのです。
5月 22, 2013 at 07:05 午前 | Permalink
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