こわい体験
畏友、白洲信哉が編集長になり、リニューアル後絶好調の『目の眼』連載の、骨董屋めぐりの原稿を書き始めなくては、とあせりながら、ふと思い出したことがある。
今回書く原稿の取材で、銀座の刀剣店、長州屋さんを訪問したときのこと。
店に入る直前に、通りで、いきなり背の高い外人さんがぼくの顔を見て「あっ!」と言った。
ここまでは、よくあることである。
「あんた、テレビで見たことあるねえ。」
ここまでも、しばしばあることである。しかし、それからが違っていた。
「あんた、名刺持っているねえ。名刺ください。」
「いや、持っていない、ごめん、持ってません。」
「あんたのような、有名な人が、名刺を持っていないなんて、これ、失礼ねえ。」
その、イタリア人ぽい、大柄の外人さんが、午後4時、まだ日が明るいうちから酔っ払っているのかどうかはわからなかったが、初対面で、通りすがりに、いきなりそう来るのは明らかにヘンである。
ていうか、ヘンだよね? (時々、自分の常識が、世間のそれと同じなのかどうか、わからなくなることがあるので)
とにかくこれはやばい!と思って、私はさっと逃げた。
長州屋さんに入って、甲冑や兜に囲まれたら、少しほっとした。
外人も、さすがにそこまでは追いかけてこなかった。
なんだったんだろう、今のは。
人は、時々不条理な経験をすることがあるが、あれはとびっきりだったな。
いきなり外人に話しかけられて、名刺を出せと言われ、名刺がないといったら、失礼だと言われた。
失礼なのは、お前の方だ、と言いたかったが、そんなことよりも、とにかく怖かった。わけのわからない不条理は、とにかくコワイ。
ああいう現象は、一体どういうことなのでしょう。
そんなことを思い出しながら、「目の眼」原稿、ゆるりゆるり書こうと思います。
4月 4, 2013 at 10:37 午前 | Permalink
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