ロングビーチのTEDで風邪を引いて、日本に帰ってきて以来悪化した今年の花粉症。
とにかく、水鼻が出て、鼻がつまって、くしゃみが出て、苦しかった。
「これは、死ぬ〜」
「もうダメだ〜」
などと、珍しく弱音を吐いていた。
人間というものは、体調が悪いことが続くと、自然に、世界観とか、未来への見通しも、暗くなっていくんだよね。
あれは、火曜日の夜。家に帰りながらウィキペディアで「花粉症」の項目を読んでいたら、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。
てめ〜 花粉症のやつめ。全部、オレに当てはまることばかり書いてあるじゃないか。くそう。今に見てろよ。このままじゃ終わらないぞ。
翌日、私は、驚くべき暴挙に出た。
いきなり、花粉舞う外気の中を、わっせ、わっせと走り始めたのである。
てめ〜、この野郎、と鼻から空気を思い切り吸い込みながら。
私が走るコースは、一周25分くらいで、二周走ると、50分で、ロスタイムを含めたサッカーの試合ハーフ分だと思っている。
常々、「日本代表がピッチの上を全力疾走するように」という喩えを使うけれども、それくらい走らないと気合いが入らないと思っている。
それで、水曜日、50分、わっせ、わっせと走った。
最初は、何しろ、このところ走っていないから、よたよたのろのろしていた。途中で、何度もやめようと思った。
それでも、バカみたいに走り続けた。そしたら、徐々に、バネが働きはじめた。気合いが入って、身体の奥から力がわいてくる感じ。
でも、なんとかの冷や水で、案の定、夕方にかけて、花粉症が悪化して、ヒューマン・ライツ・ウォッチのチャリティー・ディナーに出席できなかった。
せっかく、ロンドン在住の水野弘道さんが席を用意してくださったのに。
(私がいなかったにも関わらず、私が、地方でも東京でも、最低2時間、最大12時間どんな要件でも伺うという「茂木健一郎を独占する権利」のチャリティ・オークションは、なんと65万円で落札されたという。代金はすべて世界の人権問題を調査するオペレーションの費用に。さすがヒューマン・ライツ・ウォッチ。さすが、水野さん。うまくお話してくださったのだろう。ところで、誰が権利を落札したのか、ぼくはまだ聞いていないのです。わくわくドキドキ。)
走ったら、花粉症が悪化して、ヒューマン・ライツ・ウォッチにチャリティー・ディナーに出られなかった。
それにも懲りずに、次の木曜日も、私は、わっせ、わっせと25分を2周走った。本当は、野望としては、4周走ってロスタイムを入れて一試合分疾走してしまおうと思ったのだけれども、さすがに、2周したところで、エネルギーが尽きてしまった。
そしたら、その後のTokyo Designers Week.tv(BS日テレ月曜日放送)の収録で、鼻が詰まって、ふがふがいいながら家入一真さんや山元賢治さんと話すことになった。となりの清川あさみさんは笑っていたに違いない。
その後、常見陽平さん、池田信夫さんとのアゴラのニコ生に出て、打ち上げで神田の居酒屋でビール飲んでたら、マジで鼻つまって調子悪くなって、おぼろ月を見上げてため息ついてねむりについたのは午前2時30分過ぎ。
それで、睡眠短いし、今朝はさすがにムリだろう、と持ったけれども、やっぱりばかみたいに走った。1周25分だけ走った。
そしたら、身体の芯が徐々にかたまってきたというか、気合いが入ってきた気がする。やっぱり、人間は(私は)走っていないと、ダメだ。
花粉症を治す、といっても、マスクをしたり、クスリを飲んだりするのは、なんとなくイヤなんだよね。やっぱり、走ることで反撃したい。おそらくぼくはバカなんだろうけど、そうやって、生きてきたんだよね。
今日は暖かかった。それで、今年初めて半袖、半ズボンで走った。昨日走った時は飛んでいるのはモンシロチョウだけだったのに、初めて、ツマキチョウを2、3頭見た。うれしかった。春が来た気がした。
桜が散る頃、ツマキチョウが飛ぶ。
これが、首都圏の虫屋は皆知るところの経験則である。
今年は、これに、新しい経験則が加わった。
「半袖で走るようになると、ツマキチョウが飛び出す(よい子はマネしてはいけません)。」
50年くらい経つと、こんなものでもことわざになるかしら。まあ、ならないだろうなあ。
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