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2013/02/20

ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチから、ジョブズが歩いた切実な理由。

日本人にとって、英語を空気のように感じる環境が不可欠だと信じて、毎日、こんなメルマガを発行しています。

樹下の微睡み 英語塾 第78回 ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチから、ジョブズが歩いた切実な理由。

 偶数回の講座では、さまざまな英文を読んでいます。引き続き、アップルの創業者で、2011年に亡くなった、スティーヴ・ジョブズさんに関する英文をとりあげましょう。

 今回は、ジョブズさんのスタンフォード大学でのスピーチから、「歩く」ということについて考えさせる部分を取り出します。

 2005年6月12日、スタンフォード大学の卒業式でのスティーヴ・ジョブズ氏のスピーチは、今や古典、伝説の仲間入りをしています。
 全編、ぐっとくるんですよね。人生の重みが、かかっています。

それでは、今回の英文です。

It wasn't all romantic. I didn't have a dorm room, so I slept on the floor in friends' rooms, I returned coke bottles for the 5¢ deposits to buy food with, and I would walk the 7 miles across town every Sunday night to get one good meal a week at the Hare Krishna temple. I loved it. And much of what I stumbled into by following my curiosity and intuition turned out to be priceless later on.

それでは、日本語で、だいたいの意味を見ていきましょう。

それは、ロマンティックというわけではなかった。(It wasn't all romantic.)私は、寄宿舎の部屋を持たなかった( I didn't have a dorm room,)だから、友だちの部屋の床で寝た。( so I slept on the floor in friends' rooms, )私は、コカコーラの瓶を店に返して、五セントのデポジット代をもらい、それを集めて食べ物を買った。(I returned coke bottles for the 5¢ deposits to buy food with, )毎週日曜の夜には、町を横切って、7マイル歩き、(and I would walk the 7 miles across town every Sunday night)ハレークリシュナの寺院で供される(無料の)まともな食事にありついた。( to get one good meal a week at the Hare Krishna temple. )でも、そんな生活が好きだった。(I loved it.) そして、その頃、私が好奇心と直感のままに出会った多くのものが、後に、かけがえのないものだとわかった。(And much of what I stumbled into by following my curiosity and intuition turned out to be priceless later on. )

 いかがですか?

 前回、歩くことの効用として、アイドリングすることによって、脳の中のデフォルト・ネットワークが活動して、情報が整理され、創造や創発に結びつくのだと述べました。

 学生時代のジョブズは、しかし、それが脳にいいから歩いていたわけではありません。町の端から端へ、7マイル(約11キロ!)歩いて、無料の食事にありつくために歩いていたのです。

 もともと、人間が歩くということは、そのような切実な思いからなのかもしれません。飲み水を汲むために、一日何キロも歩かなければならない場所が、世界にはまだまだあります。現代の私たちは、歩くということをまるで「ついでに」やること、オプショナルな行為だと思いがちですが、本当は、切実なことなのですよね。

 そんな原点を思い起こさせてくれるジョブズのスピーチ。英語の醍醐味がそこにはあります。

 いやあ、英語って、本当に深いですね。ではまた!

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2月 20, 2013 at 09:21 午前 |