「ぼくは、本当に自分のやりたいことをやってきたのか」
二日前の晩、有吉伸人さんと、NHK近くの沖縄料理屋のようなところで飲んだ。
最初はテーブルがなくて、入り口のカウンターのようなところに二人で座って。まずはオリオンビール。ぼくは二杯目もオリオンにしたけど、有吉さんはサワーに移った。
有吉さんは、胸がざわざわしているらしい。『プロフェッショナル 仕事の流儀』を離れても、驚くほど多くの番組にかかわりつつ、すぐれた仕事をして、それでも、胸がざわざわしているらしい。
「茂木さん、ぼく思うんですけどね」と有吉さん。「ぼくは、本当に自分のやりたいことをやってきたのかと。」
胸を突かれた。ぼくにも似た思いがある。世間の需要というものと、自分のやりたいことはかならずしも一致しない。研究上のことだってそう。流行と、本当に大切な問題は、かならずしも一致しない。
ぼくは、有吉さんの佇まいに耳を傾けるのが好きだ。イノシシのような外観の有吉さんだけど、心の奥に、澄んだ朝の湖のような場所があるから。
有吉さんと、『プロフェッショナル 仕事の流儀』のスタジオで毎週顔を合わせていた、4年3ヶ月。あの日々は、私の胸の中に、宝物として輝いている。
「過ぎ去って、初めてかけがえのない日々だったとわかるんですよね。」
本当にそう。そして、有吉さんは未来を見ている。ぼくだって。でも、久しぶりに会って沖縄料理を食べている時くらい、振り返ってもきっといい。
有吉さんと別れ、夜道を歩きながら考える。「ぼくは、本当に自分のやりたいことをやってきたのか」と。
9月 7, 2012 at 10:17 午前 | Permalink
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