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2012/08/02

秋が向こうからやってきた。

白洲信哉が、秋から新しいことを始めるというので、それに因んでごはんを食べたいという。

午後6時。まだ日が強く、暑い銀座の街を歩いて、目的の店を見つけた。

桜井さんや滝沢さん、阿部さんが先に来ている。

信哉からは、今新橋だという連絡があってしばらくして、よう、と顔を出した。

桜井さん、信哉は骨董仲間で、かごの中から唐津やらなにやらを取り出していろいろ言っているが、こっちには一向にわからない。

それでも、信哉がいつも貸して呑ませてくれる唐津の無地だけは、「あっ、これだ」と今日もお借りすることにして、さっそく酒を呑み始めた。

「そういえば、ぼくの前で壊れた黄瀬戸は、どこにあるんだ?」

「ここにあるよ。」

「あっ、そうか。へえ、うまく継ぐもんだねえ。」

桜井さんと信哉は、阿部さんや滝沢さんをなんとか骨董の方に引き込もうとしている。ぼくは、いずれにせよ埒外だから気が楽だ。

そのうち、不思議なことがあった。信哉に借りた唐津でお酒を呑んでいるときに、「あっ」と思ったのである。

「どうした?」と信哉。

「いや、今、この夏初めて、秋が来たような気がして。」

信哉が貸してくれた唐津の無地で呑んでいたら、秋が向こうからやってきた。

それでも、店の外に出たら、相変わらず暑い。先ほどの幻がいよいよ怪しく、はて、酔っ払ったのかしら。

8月 2, 2012 at 07:21 午前 |