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2012/03/01

茂木健一郎TED2012でのトーク 全文とご報告

以下は、カリフォルニア州ロングビーチで開かれたTED 2012における、茂木健一郎によるトーク(2月29日、セッション5内)の全文です。

東日本大震災からの一周年の十日前、復興に向かう日本人の思いを、漁師さんの間に昔から伝わる「板子一枚下は地獄」(Under the board, there is hell)という言葉に託して、訴えました。

最後に、被災地である釜石からお預かりした大漁旗を、復興への思いをこめて、TEDの会場で思いきり振りました。

今回のトークを準備するに当たっては、岩手県釜石市の方々に本当にお世話になりました。

未曾有の大災害の悲しみ、苦しさにも負けずに、復興への努力を続けられている釜石の方々に、どれほど勇気づけられたかわかりません。

その思いを背負って、また日本人代表として、万全の準備を重ねて、一生懸命トークをいたしました。

漁師で、現在釜石市議会議員の木村琳蔵さんには、大切な大漁旗をお貸しいただきました。

テレビ岩手の柳田慎也さんには、津波が押し寄せる中必死の思いで撮影された映像の使用をご許可いただきました。

「復興の狼煙」ポスタープロジェクトのみなさんには、トーク内でのポスター画像の使用をご許可いただきました。

また、NPO法人の遠藤ゆりえさんには、さまざまな側面でご支援いただきました。

その他、お世話になった釜石市役所の方々に、心から感謝申し上げます。

ありがとうございました。

2012年2月29日 カリフォルニア州ロングビーチにて
茂木健一郎

トーク全文 (日本語訳は、このページのいちばん下にあります)


Talk given by Ken Mogi at TED Long Beach on 29th February, 2012, 10 days before the 1st anniversary of the Great Eastern Japan Earthquake of 2011.

twitter: @kenmogi
e-mail: kenmogi@qualia-manifesto.com

The reason for resilience.

On March 11th 2011, a massive earthquake hit Eastern Japan. About 30 minutes later, devastating waves of tsunami came ashore across the Tohoku area. It was a natural disaster of a scale unprecedented in the remembered history of Japan. Scientists later confirmed that it had been an event once in a thousand years. Then the nuclear power plant accident at Fukushima followed, casting shadows over people’s lives and hearts. It was a “black swan” event that even experts had failed to predict. The tsunami swept cars, houses, to the utter despair of those looking on in disbelief. Children cried, while their parents could do nothing but to comfort them. Tens of thousands of people lost their loved ones, their cherished homes, and their long-held ways of life.

In memory of the people who lost their lives in the earthquake and tsunami, I would like to dedicate here a moment of silence.

Almost immediately after the disaster, recovery efforts started. People around the world were impressed by the resilience of the Japanese people, who never forgot smiles on their faces, despite the incredible difficulties encountered in the wake of a disaster.

Here I would like to share with you a philosophy behind the resilience of Japanese people. Among Japanese fishermen, there is a saying that “under the board, there is hell.” Once the Mother Nature rages, there is nothing you can do about it. Despite the risks, a fisherman ventures off into the ocean, to do his best to make a living.

This old proverb is true for all of us. As the world becomes small, we are facing newly emerging oceans of contingencies. Just like the Japanese fishermen, we don’t give up. We proceed, with smiles on our faces. In fact, we can even say that risks and uncertainties are the mothers of hope and wisdom.

Here I have a flag, given to me by a fisherman in Kamaishi, who has been personally affected by the tsunami. In order to cheer us up, I swing here the Japanese fisherman’s flag. Under the board, there is hell. That’s why we all hope to build peace and prosperity on our humble boat, through our resilience and hard work. And that’s why we are all here today. Thank you very much.


TEDの会場に行く直前、釜石から託された大漁旗と一緒に。


トークの様子を伝える、 TEDのブログより。


トーク中の写真1 Patrick Newell氏提供


トーク中の写真2 Patrick Newell氏提供


トーク中の写真3 Patrick Newell氏提供


トーク中の写真4 Patrick Newell氏提供


[日本語訳]

強靱さの理由

2011年3月11日、巨大地震が東日本を襲いました。約30分後、破壊的な津波が、東北地方沿岸を襲いました。それは、記憶に残る日本の歴史の中で、前例のない規模の自然災害でした。科学者たちは、後に、それが「千年に一度」のイベントであったことを確認しました。そして、福島における原子力発電所の事故が起こり、人々の生活や心に影を落としたのです。それは、(想定を超えた)「ブラック・スワン」の出来事(予想できない出来事)であり、専門家さえも予想することに失敗したのです。津波は、車や家を流し、人々はそれを信じられない思いで、また絶望の中で見るだけでした。子どもたちは泣きましたが、親たちも、ただ、なぐさめること以外の何もできなかったのです。何万もの人が、愛する者、大切な家、長く培ってきた生活を失いました。

地震や津波で命を失った方々のことを想い、ここに、祈りを捧げたいと思います。

災害が起こってすぐに、復興への努力が始まりました。世界中の人々が、日本人の精神の強靱さに感銘を受けました。日本人は、災害の後の筆舌に尽くしがたい困難にもかかわらず、決して微笑みを忘れなかったのです。

今、ここで、日本人の強靱さの背景にある一つの哲学をみなさんと共有したいと思います。日本人の漁師たちの間には、「板子一枚下は地獄」という言い伝えがあります。母なる自然が怒ったとき、私たちにはもはやなす術はありません。リスクがあるにも関わらず、漁師たちは大海原に乗り出していきます。そして、生きるために、最善を尽くすのです。

この、古い言い伝えは、私たちみんなにとっての真実であると言えるでしょう。世界が小さくなるにつれて、私たちは新たな偶有性の大海原に直面しています。日本人の漁師たちのように、私たちは決して諦めません。私たちは、微笑みを浮かべながら、前進するのです。リスクや不確実性こそが、私たちの希望や智恵の母であるとさえ言えるのです。

今日、私はここに、ご自身も津波で被害を受けられた釜石の漁師さんから託された大漁旗を持ってきています。私たちみんなを元気づけるために、ここで、大漁旗を振りたいと思います。板子一枚下は地獄。だからこそ、私たちは、自分たちのささやかな船の上に、平和と繁栄を築きたいと願うのです。私たちの強靱さと勤勉さを通して。だからこそ、私たちは今日、ここに集っています。ありがとうございました。

(翻訳は、茂木健一郎自身による)

3月 1, 2012 at 05:27 午前 |

コメント

茂木健一郎さん こんにちは 平成23年12月13日(火)第1部 11:00 ~ 第2部 12:00 ~
講師: 脳科学者 茂木健一郎 先生
演題: 「日本八策・改革への処方箋」への出演有り難う。
第九策を付け加えてください。日本の義務教育に国際学校(InternationalSchool)設立の許可、教育の認可と承認。国際協定を急ぎ合意する。ここブラジルでは通称アメリカンスクールと呼ぶ私立学校(義務教育レベル)があり、両親の外国へ居住時、子供は国際学校の認証を貰い欧米の義務教育へ進級して学び、帰国時は再びこの学校へ戻り教育を続けて受けられる。国家の認定もあります。これを日本の文部省に認めさせ、企業戦士の子弟の一家が親子一緒に暮らせる環境作りを進めることを考えています、文部省副大臣へもメールして協力依頼しています。茂木先生の支援があれば、より高いレベルの国際学校を日本に設立し、海外の企業戦士へも貢献できると考えて
御願いしています。よろしくご協力をお願いします。敬具

投稿: 津賀 和宏 | 2012/03/17 17:12:00

こんにちは
茂木先生のお話しをYOUTUBEなどで聴かせていただいて、先生の話がすごく面白くて感動しました。

関係ないけど、「知性」について、私の体験を交えて、非典型と典型について覚えたことがあります。
それは、IQよりも非典型性が必要なグローバルだという事柄に対して、私(理系学士)は思うのは、非典型的な頭のよさというのかどうかわからないけど、私は昔、共感覚らしきものをもっていたことがありました。音を聞くと、いつも頭の中にイメージがわき、国語などの教科書を3回ほど読むと一字一句丸暗記することができていました。ところが少年の頃に突然おかしくなり、それができなくなったのです。
本人はものすごく残念でしたが、その悔しさをばねにがり勉することで偏差値60程度の理科系の大学に入りました。

それで、思うのですが、共感覚も、才能か経験か私にはわかりませんが、かなり小さい頃から何か恐怖のようなものをもっていて、それから逃れるためにそういう才能がでてきたことを覚えています。
だから、小さい頃であれば、非典型的才能を開花することができるかもしれないと思っています。

ピーターアーツとおなじように私は共感覚はなくなってしまったけど、努力する気持ちがあります。

何事も才能がなくても努力することが大事なのではないでしょうか?
最近の子供達は才能がないからなにもやらない傾向があるように思います。私はそれはいけないと思います。才能がなくても努力すれば典型も非典型もおなじレベルに達することが出来ると思います。

だから、非典型的才能がなくても、努力さえすれば、これからの時代も一流になれると予感しております。。

投稿: うにくんまん | 2012/03/17 2:50:02

震災から1年を迎える今年。復興か、それとも衰滅か。どちらを選ぶかといえば、皆復興を選ぶことだろう。

この1年こそは、震災の大きな痛手から少しでも、我々この国の人間が立ち直り、今まで日本を覆い尽くしていた「衰滅を齎す諸々の、賞味期限が切れたシステム」を捨て、新しい日本という世界を構築する為に立ち上がらなければならない時だと、最近つくづく思う。

板子一枚下は地獄…極限の状態であっても人間というのは生きる為に必死の智慧を絞っての努力を怠らぬものだということを、被災した人々の生き様に見ることができる。それにしてもTVで映し出される震災被災者のドキュメンタリーは何故悲哀が漂うものばかりなのであろうか。もっと前向きに闘っている人々にスポットを当てられないものかと思う。

茂木さんがTEDで訴えられた「リスクや不確実性こそが、私たちの智慧や希望の母であるといえる」という言葉は、3.11の国難の悲劇を乗り越えて、勇敢に前向きに、無限の希望を抱いて生きんとする、多くの人々にとっての大きな励ましのエールとなることだろうと思う。

投稿: 銀鏡反応 | 2012/03/10 22:46:02

広大教育英文科に合格することはできませんでした。

でも、この不合格で今まで感じることのできなかった人として大切なことが沢山わかりました。


一つには
合格という結果よりもそれまでの努力という過程の方が重みがあると、表面的にでなく心から理解することができたことがあります。

東日本大震災の話とは関係がありませんが、先生には助言を賜りましたので、感謝の思いを伝えたいと思い書かせていただきました。

先生のお言葉は今でも心とメモ帳に残っています。
ありがとうございました。

投稿: 荒川健太 | 2012/03/10 11:30:55

>それは、(想定を超えた)「ブラック・スワン」の出来事(予想できない出来事)であり、専門家さえも予想することに失敗したのです。


予想も出来なかったくらい無能な専門家だったということですね?
私は逆で専門家たちは予想していたと思っています。
予想していたにも関わらず実行できなかった無能な専門家だったと思っています。

福島で同じことをを語ってください。
きっと命がけの反論が出るでしょう。
しかしあなたはさらに続けるはずです。

「いいじゃないですか、私の考えですから」

そうです。いいのです。
だから福島で語ってください。

投稿: 佐々木 | 2012/03/07 23:43:18

おまさんは、まっこと、心優しいお人やねぇ。

おまさんと一緒に生きていけることを、うれしゅう思います。

ありがとう。

投稿: せいこ | 2012/03/04 23:31:34

昨年の大震災から一年がたちました。日本中の人が共有した恐怖、悲しみ、苦しみ。 少しずつ復興してゆくなかで、薄れてゆきそうな記憶ーー
先生のTED2012でのトークは 被災地に何度も足を運び、沢山の人々の声を受け止めた人の とても深いメッセージに思えました。机上ではなく、機上で考え、日本を愛し牽引してゆく勇姿は本当にビッグなパイオニアです!!
ありがとうございました。

投稿: E.K | 2012/03/04 23:10:25

ただひたすら感動しました。

投稿: 西丸典秀 | 2012/03/04 7:46:07

感謝と感動で、胸が熱くなりました。

茂木先生 ありがとうございました!!

先生の旗ふる姿に どれだけ多くの人達が、
希望と勇気をいただいた事でしょう。

私も負けずに 宿命を使命に昇華出来るよう
生きて行こうと思いました。
勝たなくても良いから、負けないで生きて
行こうと思いました。

ほんとに、茂木先生って
いい男!! だねぇ!!

投稿: 太田恵 | 2012/03/03 22:03:38

日本はこれからますます世界的立場に立たされていきます しかし、世界を見る場合逆にそこを見渡す自分の眼を凝視しなければなくなると考えます すなわちわれわれは 日本人であるということ西洋文化を手放しで 受け入れ 欧米の価値観に追いつこうとしても われわれはフランス人にもアメリカ人にもなれない なることができない 日本人であるということ ではその゛日本人゛を 形づくっている゛実体゛はなんなのか? イデオロギーやエコノミーの視点からばかりではなく もっと人間の肉体のなまの内側から問題を探って行かなければならないのではないのでしょうか?

投稿: 及川祐輔 | 2012/03/03 8:00:03

「リスクや不確実性こそが、私たちの希望や智恵の母」という言葉が印象に残りました。
「リスクや不確実性はあってはならない」というような風潮になっている気がします。子どもを育てて行く中でいつもモヤモヤしているのはその辺りなのかなぁ

投稿: | 2012/03/02 8:01:36

MR.を心のそこから誇りに思います。

投稿: Yoshiko.T | 2012/03/02 1:01:01

とかくテレビでは被災者の悲劇的な姿ばかりが 報道されるけど 先生は実際に被災者に 会ってみてどうですか?

投稿: 及川祐輔 | 2012/03/01 20:45:06

英語良くわからないのに、涙ぐんでしまいました。茂木さま発表していただいてありがとうございます。お疲れ様でした。おかげで日本人で良かったと思う自分に気がつきました。

投稿: 安永やすえ | 2012/03/01 13:22:12

素晴らしい発表だったです。他の人のツイッターから平行して見ていました。現場はさぞかし参加者全員が盛りあがっていたでしょね。やっぱり、素晴らしい。先端を引っ張って言ってるのに、中々、他の人は追いついてこない。この面白さが伝われば、もっと日本は開けて行けるだろうにね。沢山の人が挑戦して言うような若者がこれから、茂木さんを目指して行けばうれしいですね。茂木さんを超える人が、増えて欲しいと感じていますよ。ところで、この笑っている表情、やはり、似ている。夏、にPCに遊びに来る虫がいてね、その虫で良く遊んでいました。カーソルを向けて、その⇒で、つつくと警戒して学習をしていた。とてもかわいい虫でね、きっと他の人は嫌がるだろうけれども、学習能力のある、いわゆるいい脳をもった虫だという事が解った。また、夏の時期になった、遊ぶ、と思い。さて、お終い。では、楽しんで来てください。 もう一つ ミステリー!

投稿: | 2012/03/01 12:11:52

なんか読んでて泣けてきました・・・・。武士道ですね。素晴らしいです。ありがとうございます。
去年の震災の翌日に、こんな歌を読みました。

おおうにも いかにせんとや思うらん 今年ばかりは墨染に咲け

墨染の色も今年は少し薄まりて、今年の桜は咲いてほしいものです。
私たち日本人の心に。

投稿: 海の母 | 2012/03/01 9:29:16

Great talk, so far only having read, but will watch when it is up. Thank you Mogi-san for encouraging us all.

投稿: Goldmonk | 2012/03/01 9:14:26

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