椎名誠さんに教わった、いわゆる、「床との勝負」について
習慣というのは恐ろしいもので、小学校に上がる頃から走るのは好きで、ずっと走り続けているけれども、筋力トレーニングは好きだと思ったことが一度もない。
だから、やろうと思っても、続いたことがない。それで、椎名誠さんに会ったときに、そのスリムでがっちりした身体が素敵だなあと思った。
私は髪型のせいか、椎名さんに似ているといわれることがときどきある。数年前も、道を歩いていたら、いきなり見知らぬおじさんに、「あんた、椎名誠によく似てるねえ!」と言われた。そのあと、おじさんは、ぶつぶつ、「もっとも、あんたはちょっと肥えとるけど」と言いながら去っていった。
椎名さんは、高校の頃から、「一日一回床と勝負する」を続けているという。その回数が、腕立て200回、腹筋200回、スクワット200回。
「いつやるのですか?」と聞くと、「夜眠る前」だという。「えっ」と私は思った。椎名さんは大のビール好きで知られている。「酔っぱらっていてもね、必ずやるんだよ。寝る前に歯を磨かないと気持ちが悪いのと同じこと」
なるほど、と思った。「寝る前に歯を磨かないと気持ちが悪い」というたとえが、すっと心に落ちた。
ただ、私は、酔っぱらうと眠くなるたちなので、寝る前にやるというのは無理だ。だから、朝とか昼にやろうと思って、何度かチャレンジしたが、どうも続かない。
そもそも、最初から椎名さんのいうように「200回」もできるわけがない。そこで、50回から少しずつ回数を増やしていく作戦にした。
そこで、連続日数にこだわった。というのも、一日でも途切れると、それで「あっ、もういいや」と思ってしまう可能性が高いからである。それで、いわば意地となって、連続日数を増やして行ったのである。
ところが、先日、ワシントンに夜遅く着いて、翌朝も早くから仕事で、どうしても床と勝負の時間を取ることが生理的に無理だった。一つには、回数が108回に増えていたこともある。
本当は椎名さんの言う「200回」を目指したかったのだけれども、とても体力的に無理で、しかもだんだん所要時間が延びていったので(なにしろ途中ではあはあいいながら床の上にのびているんだよね)、いざやるとなると、コンパクトにできない。時間がかかる。それなりの覚悟が必要で、機動性に欠ける。
108回で回数の増加を止めたのは、「煩悩」の数だからちょうどいいや、と思ったのである。これでしばらく続けて行こうと思ったが、やっぱり難しかった。ああ、オレは負けた。ワシントンの朝に、しみじみと思った。
というわけで、ついに60回で連続が途切れてしまった。途切れてしまうとなんとなく糸の切れた凧のようで、二日ばかりさぼってしまった。
今朝、よくよく考えた。やらないよりもやった方がいい。しかし、108回やるのは、どうも時間がかかりすぎて毎日というわけには行かないかもしれない。それならばそうだ、50回ずつにしたらどうだろう。そうすれば、えいやっといきなり始めて、コンパクトにやりきることができる。
連続何日、じゃなくて、何回目、ということにしたらどうだろう。それから、もし余裕があれば、一日複数回やってしまったらどうだろう。そんな風に、臨機応変に、床と勝負していったらどうだろう。
というわけで、酒を飲んで酔っぱらっても眠る前に必ず200回ずつやるという師匠の領域にはついに達することができなかったが、腕立て、腹筋、スクワット、背筋を各50回ずつやるゲリラ的機動的床との勝負を、しばらく続けていきたいと思っている今日この頃である。
師匠とのツーショット。「弟子よ、まあ、やってみなはれ!」
3月 30, 2012 at 09:04 午前 | Permalink
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