ジャガーの眼
筑邦銀行本店の前を、岩田屋に向かって歩いていたら、ちょうど向こうからセーラー服を着た女子高生が一人やってきた。
髪の毛は肩までくらいで、なんとはなしに、全体に、アンニュイな雰囲気を漂わせていた。
優等生で、学習を素朴にやっているというのでも、落ちこぼれでやり過ごしているのでもなく、何か存在に自覚的なところがあって、心に傷を負っていて、でも、世間というやつにキッと向き合っている、そんな印象があった。
ぼくが彼女と通り過ぎたのは、ほんの数秒のことだったろうか。すれ違いざまに、彼女が一瞬ぼくの目を見た。ジャングルの中で相手を射すくめる、ジャガーの眼だった。
何も持っていないとしても、将来は見えないとしても、人の眼はその瞬間に輝きをたたえることができる。魂のようなものが、虚をこえて一気に入ってくる。
お話はそれでおしまい。ぼくは岩田屋に行き、コーヒーを飲んだ。ケーキを食べて、ぼくは弛緩した。
11月 25, 2011 at 08:23 午前 | Permalink
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