今度から、新幹線に乗るときには、隣りの席に小泉英明さんがいらっしゃらないか、楽しみに待つことにする。
新幹線に乗ったら、すでに通路側にはどなたかが座っていらして、「ごめんなさい」と言って窓側に行った。リュックは、足元に置いた。
品川を出る頃に、その方が、「お荷物、上にあげなくていいですか?」と聞いて下さった。
「だいじょうぶです。」とその顔を見た瞬間、お互いに「あれ!」と思わず言葉が。
小泉英明さん。びっくりしたなあ。こんなところで小泉さんに会うとは。
日本橋口の券売機でぼくが買って、小泉さんは、予定していた新幹線より一本先に乗ったのだという。そんな偶然が重なって、たまたま隣りの席になった。
「どちらにいらっしゃるのですか?」
「いや、生理研で、これからの研究の方向についての議論をしてくれと呼ばれたので。」
「それでは、名古屋から豊橋にこだまで戻るのですね?」
「そうなのです。秘書の方がそのように手配してくださったものですから。」
温厚で、真摯。私の中の小泉英明さんの印象は、そのようなものだ。
「あっ、そうだ。先日、本を出されていましたよね。ちょっと辛口のタイトルのやつ。確か、脳科学の真贋、みたいなやつ。」
「いやあ、あれはね、日刊工業新聞の記者がやってきて、インタビューしたら、先生、これは記事にはとてもおさまりません、本にしましょうというので作ってくれたんです。それで、そういう場合、普通は記者の名前は出さずに私の名前だけで出すのだそうですが、私はそういうことはあまり好きではないから、記者の方の名前も出してください、と言ったら喜んで、写真もどうぞ載せてくださいと申し上げて、そうなったはずです。」
「やはり辛口なのですか?」
「いえいえ、タイトルはそうなっていますけれども、あれは科学というものは、そもそも真贋が簡単にはわからないという科学論なのです。何かが科学的か、科学的ではないかということを簡単に決めつけると宗教になる。そう簡単には決めつけない、ということをお話ししたつもりなのです。」
Angry Birdのシールがペタペタ貼られたMacBookを私はいつの間にか閉じている。
「光トポグラフィーの前は・・・」
「fMRIをやっていましてね。東大の宮下さんと、酒井さんが、一番最初に私たちのところに来てくださいまして、それで、私と宮下さんと酒井さんと三人で被験者をやっていたんです。」
小泉さんが駆け抜けてきた、光トポグラフィー、fMRIの黎明期のお話をうかがっているうちに、新幹線は名古屋駅に近づく。
結局、小泉さんと名古屋まで100分間、ずっとお話してしまった。社会性の脳科学のこと、発達のこと、典型、非典型の問題、科学における計測技術の役割など、話題はつきない。
面白かったなあ。
あんまり面白かったので、折りたたみの傘を、座席の下に忘れてきちゃったよ。そこに置いたときに、あっ、これは忘れる、という予感がしたんだけど、その通りになったなあ。
今度から、新幹線に乗るときには、隣りの席に小泉英明さんがいらっしゃらないか、楽しみに待つことにする。
10月 6, 2011 at 06:36 午前 | Permalink
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