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2011/10/12

「ぼく、ガソリン屋さんになる!」

走っていたら、見事なクロアゲハが、すーっと飛んでいった。

木立ちの間を、確信をもってまっすぐに飛んでいったので、ぼくは立ち止まって思わず見とれてしまった。

いいねえ。こういう典型的な個体は。羽根もきれいだし、精気に満ちているし。

その後、走る歩数にも、少し力がみなぎったような、そんな感じがする。

外に出た。川の横を、太陽に照らされながら走っている時、ひらひらと飛ぶ個体があった。

あっ、ホタルガだ。

こいつは、黒い羽に白い帯が入っていて、それがチラチラするし、アタマが赤くて、きれいなんだけど、何となく、夜の感じがする。人生の真っ直ぐがやがて挫折して、いろいろ発酵したり、鬱屈したり、れがまた内に籠もったりして、チーズのような匂いがするような、そんな気がする。

子どもの頃、蝶を追いかけていて、ホタルガが飛んでくるとうわーっと逃げたくなったのは、そんな大人の雰囲気に感染していたからだろう。

いやあ、まいったね。たっぷり走って、汗かいちゃったよ。

仕事へ向かうその道筋、5歳くらいの男の子と、お母さんが歩いていた。

お母さんが、「将来何の仕事をするの」みたいなことを言っている。そしたら、男の子が、「ぼく、ガソリン屋さんになる!」と即答した。お母さんが、「まあ、いいわね。素敵ね」みたいなことを言っている。

「ガソリン屋さんになる!」

男の子の心の中に、何か輝いているものがあるのだろう。

男の子が、精気に満ちたクロアゲハになって林の中を飛んでいる。

人生には、ホタルガのような時間もあって、それはそれで味わいに満ちていいのだけれども、誰でも、自分の「ガソリン屋さん」に出会うと、クロアゲハの飛翔をやがてたどるんだろう。

電車に乗って、ぼくはiPadを開き、熱心に仕事を始めた。「今、ここ」にしか、信じられるものはないから。

10月 12, 2011 at 06:51 午前 |