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2011/09/09

離れには次郎がいた。

なでしこが終わったら、ロビーに下りて集合と聞いていた。

中尾社長が、佐々木厚さんといっしょに立っていた。

「あれ、はっしーは?」

「ビデオをとりにいっています。もぎさんに、披露宴用のコメントをほしいって。」

ロビーを抜けた瞬間、「あれっ、ここ、知っているよ」と叫んだら、はっしーが笑った。「そうです。ここは熊本です。」

熊本市立美術館のある通り。マリーナ・アブラモヴィッチの作品が常設されているところ。

中尾社長は、先をすたすた歩いていく。「中尾さん、すごいなあ」と言ったら、はっしーが、「どこの街も知っていますからねえ。」とつぶやいた。

ビルの上の方の店に行くのは、ぼくだけではとても無理だ。見つからないし。

席に座って、ビールが来た。はっしーに、「ここで撮るの?」と言ったら、「はい」と言う。

でも、隣りの声も聞こえてくるし、ぼくの顔はすぐにでも真っ赤な太陽になりそうだ。

「明日の朝にしないか。朝ご飯の時とか、会場でとか。」

「そうですねえ。」

中尾社長も「それがいい」と賛成してくださったので、「無罪放免」となった。これで、安心して飲める。

「乾杯!」

アキオからメッセージ。アムステルダムで、悪天候で止まっているのだという。「一日遅れます。」

残念。アキオに敬意を表して、馬肉はほんのさわり程度にした。

「五郎八離れにいる」とつぶやいたら、アキオが、「アメリカ人のヘンな板前がいませんか?」と聞いてくる。

「さあなあ。ここは離れだからなあ。離れに、そんな人いるのかなあ。」

アキオも、酔っぱらって、離れだったかどうか、わからないのだという。

おいしく頂いて、さて、移動するかと立ち上がった。トイレに行って戻ってくると、佐々木さんが、「茂木さん、ほら」という。

いた! 外国の人が、白衣を着て、にこにこ笑って料理している。「イカの料理が得意でしょう?」と言うと、「寿司なら何でも」と答える。

胸には、大きく「次郎」という名札がついていた。

五郎八離れには、次郎がいる。

大きな手と握手した。名刺を下さったので、ポケットに入れた。それから、ふたたび夜の街の人となった。

翌朝。ポケットの中から紙を取り出す。次郎は、オーザー・ユージン・ウィリアム・ジュニアさんだった。

9月 9, 2011 at 07:29 午前 |