離れには次郎がいた。
なでしこが終わったら、ロビーに下りて集合と聞いていた。
中尾社長が、佐々木厚さんといっしょに立っていた。
「あれ、はっしーは?」
「ビデオをとりにいっています。もぎさんに、披露宴用のコメントをほしいって。」
ロビーを抜けた瞬間、「あれっ、ここ、知っているよ」と叫んだら、はっしーが笑った。「そうです。ここは熊本です。」
熊本市立美術館のある通り。マリーナ・アブラモヴィッチの作品が常設されているところ。
中尾社長は、先をすたすた歩いていく。「中尾さん、すごいなあ」と言ったら、はっしーが、「どこの街も知っていますからねえ。」とつぶやいた。
ビルの上の方の店に行くのは、ぼくだけではとても無理だ。見つからないし。
席に座って、ビールが来た。はっしーに、「ここで撮るの?」と言ったら、「はい」と言う。
でも、隣りの声も聞こえてくるし、ぼくの顔はすぐにでも真っ赤な太陽になりそうだ。
「明日の朝にしないか。朝ご飯の時とか、会場でとか。」
「そうですねえ。」
中尾社長も「それがいい」と賛成してくださったので、「無罪放免」となった。これで、安心して飲める。
「乾杯!」
アキオからメッセージ。アムステルダムで、悪天候で止まっているのだという。「一日遅れます。」
残念。アキオに敬意を表して、馬肉はほんのさわり程度にした。
「五郎八離れにいる」とつぶやいたら、アキオが、「アメリカ人のヘンな板前がいませんか?」と聞いてくる。
「さあなあ。ここは離れだからなあ。離れに、そんな人いるのかなあ。」
アキオも、酔っぱらって、離れだったかどうか、わからないのだという。
おいしく頂いて、さて、移動するかと立ち上がった。トイレに行って戻ってくると、佐々木さんが、「茂木さん、ほら」という。
いた! 外国の人が、白衣を着て、にこにこ笑って料理している。「イカの料理が得意でしょう?」と言うと、「寿司なら何でも」と答える。
胸には、大きく「次郎」という名札がついていた。
五郎八離れには、次郎がいる。
大きな手と握手した。名刺を下さったので、ポケットに入れた。それから、ふたたび夜の街の人となった。
翌朝。ポケットの中から紙を取り出す。次郎は、オーザー・ユージン・ウィリアム・ジュニアさんだった。
9月 9, 2011 at 07:29 午前 | Permalink
最近のコメント