龍神様は瞬いている。
カダフィが寺田さんと来て、車に乗ったら案外道は混んでいて、でも中央道に入ったら順調に流れた。
それでも、さすがに風雨は強まって、途中で、カダフィが「うひゃあ」と声を上げた。路上に水が溜まっている。
「台風の進路は、富士山を通るルートになっています」と佐々木さんがつぶやいている。
とにかく駅前まで来た。目指すのはほうとう不動だったけれども、どうやらやっていない。
「ダメです。」
見に行った寺田さんのあとから、水の粒が吹き込んでくる。
とにもかくにも宿に着いて、ぼうぜんとしていると、ほうとう不動の、かまくらみたいなヘンな店はやっているのだという。
ふふぁふふぁふふぁ。がらんとした店で、ほうとうをいただく。うまい。うまいが熱い。熱いがうまい。これじゃ回転しないな。自家製のとうがらしもおいしい。
ごちそうさま。宿に帰る。しかし、あまりの雨に、何もすることがない。それでも、カダフィが写真を撮るというので、雨の中、富士山を見ている体で椅子に座った。
カダフィ、ひどいよう。でも、仕事だからね。
それじゃあ、後で。一人になって河口湖を見ると、まるで生きもののようになっている。
波が立ち、ものすごい勢いで渦巻いている。これじゃあ、龍神様がいて、中から天翔ると信じても仕方がない。いや、ぼくも信じたよ。龍神様、確かにお姿を拝見しました。
ソファでうとうとして、また湖面を見ると、今度は風向きが変わって鱗がないだようになっている。
龍神様、背伸びをしているかな。
夜になって、カダフィや寺田さんとすきやきをいただいていたら、あまりにも美味しいので、横になって、お腹をポンポン打ってしまった。
「こんな風にごろごろしていて、文章を書くとちゃんとしているんだから不思議です。」
カダフィがそう言っているのが聞こえた瞬間「ん?」と目覚めた。
朝になった。台風一過。びっくりしたけど、本当に富士山がある。湖の向こうに、大きくそびえていて、頭にちょこんと雲が載っている。
湖面は静かで、ただちょこまかと細かく動いているようでもあり。
嵐が過ぎ、富士山が雲を被り、龍神様は瞬いている。
9月 22, 2011 at 05:32 午前 | Permalink
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