夕暮れの迷子
「新大久保と高田馬場の間の、グローブ座」と言ったら、運転手さんはやっぱり知らなかった。
一生懸命に文字を綴った。ドレス・コードの思い出。着くまでに終わらせなくてはならない。なぜか、気持ちはずっと夕暮れのままでいて。
チケットをいただくときに、ポストイットで「楽屋に来てください」と書いてあるのが見えた。
辻仁成さんが脚本、音楽、演出をした『醒めながら見る夢』。
劇中劇があって。東京の街の見慣れた光景の、あちらこちらをツタが覆って、緑の気配が増して。途中にサプライズがあって。
演劇は言葉で推し進められていくものだけれども、途中に挟まる音楽によって、物語が飛ぶ。跳躍する。
そのふわっと浮遊した、どこにも属さない持続と、ふたたび着地した時の温度差。目眩が心地よくて。
やっぱり、ずっと夕暮れだった。昼にも夜にも、どこにも属さない、ということの意味。Lost in translation。
こういう舞台って、いいな。ぼくたちを、夕暮れの迷子にしてくれるから。心細さの中に、甘美な戦慄がある。
9月 18, 2011 at 06:44 午前 | Permalink
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