カワボウがコメントを読んでいる。
京田さんが西口に迎えに来てくださって、エスカレータを上って廊下に出るが、どこがどうなのかもうわからない。
「あれ、クロ現のスタジオって、こっちでしたっけ?」
「いや、今、反対の打ち合わせ室の方に向かっています。」
京田さんと座って、映画のVTRを見ていたらしばらくして、カワボウが来た。
「いやあ、茂木さん、どうも」とカワボウと一緒に番組のVTRを見ようとしたら、あれっ、とカワボウが言っている。
「これ、まだ音声入っていないのかな。今、確認するわ。」
カワボウが編集室に電話している。
「あのね、なんだか間に合わなかったみたいなんだよ。」
「じゃあ、河瀬さんがコメント読むしかないですね!」
ぼくは、しめた! と思った。
カワボウは、「うーん。緊張するなあ。読めるかなあ」とかなんとか言っている。
忘れもしない。あれは、『プロフェッショナル 仕事の流儀』の第一回の収録の打ち合わせの時。ゲストの星野佳路さんのVTRを見始めたら、なんだかおかしい。あれれ。ナレーションの声が、後ろから聞こえてくる。
後ろを見ると、当時ディレクターだったカワボウが、画面に合わせてコメントを読み上げているのだった。
VTRのナレーションが間に合わないときは、ディレクターがコメントをかわりに読む(NHKでは、画像に合わせて流れるコメントを、担当のディレクターが書くという習慣がある。社会情報番組部は、特にその傾向が強い)という「現場」を、初めて目撃した瞬間だった。
あのとき、「へえ、この世界ではそうなっているのか」、という感動があったっけな。
VTRがまわりはじめる。今は『クローズアップ現代』のチーフ・プロデューサーになったカワボウが、ナレーションを読む。台本に書かれた「Q」の文字に合わせて、コメントが読まれる。
なかなかうまいぜ、カワボウ!
流れる時間。過ぎ去った年月。そして、ふたたび、不思議な巡り合わせで、カワボウがコメントを読んでいる。
ぼくは、あんまり嬉しくなって、カワボウの声を思わずiPhoneで録音してしまったのである。
9月 15, 2011 at 08:11 午前 | Permalink
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