ラビの散歩
私にとっても、白洲信哉にとっても大切な編集者の奥様が亡くなられたという知らせを受けて、夜、急遽向かった。
白洲信哉といっしょにいた渡辺倫明によると、信哉の声が変わったから、おかしい、と思ったのだという。
信哉は、こんなときにはしゃんとして、頼もしい。駅の近くのセブンイレブンの横にいるから、というので行くと、駐車場の暗がりに、車の中から手を振った。
「近いけど、乗れよ」
座席に腰掛けると、小さな影が足元を動いた。ラビだった。信哉の愛犬。ミニチュア・ダックスフント。
ラビがちょこまか動いているうちに、車は着いた。
挨拶をする。やはり力を落とし、動転されている様子。私は、信哉とともに心をお伝えして、辞した。
川沿いの道。ラビは、ちょこちょこ歩いている。ラビは、何も知らないで、思わず訪れた夜風の散歩を楽しんでいるのだろう。
人生には、「ラビの散歩」みたいなことがときどきあるな。
「じゃあ、次はシンコの会で。それまで会わないでしょう。」と信哉。
「わからないぞ。でも、まあ、さようなら。」
しばらく経って、信哉からメールが来た。
おれはしっかりお前をおくるからな 葬儀委員長引き受けた!じゃあまた
ぼくは、返事をした。
ははは。ありがとう。まだまだいかないよ!
夜風の中を、どこまでも歩いていきたくなった。
8月 14, 2011 at 06:13 午前 | Permalink
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