至誠は必ず通じる
成田に着く直前まで、ずっと仕事をしていた。
空港についても、郵便局にいったり、プラグを買ったり、シンガポールドルに両替したりとターミナルの中をちょこまか走り回っていた。
落ち着きがない。ブタのわりには敏捷。
やっと飛行機に乗って、Financial TimesとかFortuneのstartupsのIPOに関する記事をぱらぱら読んでいて(yelpって面白いね!)、シートベルトのサインが消えたので、ビデオのリストを見始めたら、あった!
なんと、ワグナーの『神々の黄昏』全曲があった。ズビン・メータ指揮。ヴァレンシアとか、ラ・フラ・デルス・バウスとか、魅力的な名前が並んでいる。
見た。釘つけになった。人仕掛けのリフトやぶら下がりを多用した、舞踏な演出。ブリュンヒルデの人が、さいしょは太いな、と思ったけど、だんだん可愛く見えてきた。ジークフリートの人も良かった。そして、ハーゲンはマッティ・サルミネン。凄いなあ、この人。
結局、人生で信じられるのは、本当に良いものを一生懸命に作るということだけ。市場にも関係なく、同化圧力も意味なく。リブレットを書き、作曲したワグナーその人、スコアを見ずに暗譜で指揮するメータ。歌手の人たち(ここに立つまでに、どれだけの鍛錬をしたことだろう)。合唱の人たち(ソロの主役たちと一緒に並んで、いろいろな想いがあるだろう。それにしても素晴らしいアンサンブル)、そして、演出の人たち。いろいろとぶら下がっていたラ・フラ・デルス・バウスの人たち。
ジークフリートも、二幕の最後の方でブリュンヒルデに糾弾されていた時、「そんなことはないよ」とぶら下がって逆さまになって歌っていた。
そして、最後。ぶら下がった人たちが、飛翔するようなポーズをとる。あれは、もはや古典となったバイロイトにおけるパトリス・シェロー演出の、感動的な群衆処理の、一つの進化形だと思う。重力に抗して。
カーテンコールで、メータとオーケストラがサプライズで舞台に出るまで、ぼくはずっと一緒に拍手をしていた。飛行機の座席で。バカみたい。
ユニテルのプロダクションも編集を含め最高でした。突然予期することなく降ってきた奇跡のような時間。
至誠は必ず通じる。勇気をありがとう。
8月 23, 2011 at 10:24 午前 | Permalink
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