天丼の後悔。
昼下がりのへんな時間帯に、てんぷら屋さんに入った。
銀座のはずれ。休みなしでやっているありがたい店。場所柄、買い物に来たような人々も多い。
それに、常連客。
折しも、初老の男性が入ってきた。「あら、今日は少し遅いですね。」お店の人が声をかける。近くに住む、老舗のダンナかもしれない。
メニューを見る。海老天が二つ着いた普通の天丼と、かき揚げだけの天丼。しばらく迷ったが、かき揚げだけの天丼にした。
思い切りのよさを、褒めてやりたい。
「かき揚げ」こそが、天丼の華だという概念は、自分の中でいつできたのだろう。本郷からずっと白山上に下っていったところにあった「天安」あたりでか。おやじさんが黙って、最後にかき揚げを箸で動かした。天ぷらのフィナーレは、かき揚げ。海老がなくても、かき揚げがあればいい。通ならば、そういうんじゃないかな。
運ばれてきた瞬間に、しまったと思った。かき揚げはおいしい。しかし、それも、海老のぷりぷりという序章があってのこと。いきなりかき揚げが出てきたときに、舌がしんなりしてしまうような気がした。
天丼の後悔。
曖昧な気持ちで街に出た。激烈なる太陽が照らしつけている。中国から来た観光客だろうか、十人くらいが立って、銀座の街並みを熱心に撮影している。
8月 16, 2011 at 06:46 午前 | Permalink
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