杜子春のまどろみ
収録が終わったあと、横のインド料理屋で乾杯をした。
ぼくは、まだ行かなくてはならないところがあって、中途半端な気持ちでのビール。植田がどんどん料理を注文するけれども、ぼくは見ているだけで手をつけない。
みんなが食べている中でひとりだけ食べない。ぼくにしては珍しく、なんだかずいぶんお行儀よい感じがして。お行儀とは、つまり、何かをしない、ということなのだなと思う。
ある尊敬する作家の言葉に、立食パーティーではものを食べるものではない、ということが書いてあって、ぼくは案外律儀にそれを守っている。もちろん、ごく身内の小さなパーティーは別だけれども、たくさんの人が来るようなパーティーでは、一切手をつけずに、いろいろな方とお話をすることを優先する。
そんな時に、どなたかが気を利かせて料理をお皿に盛ってきてくださると、かえって面食らってしまうのだ。本当に、もうしわけないことなのだけれども。
もっとも、これは都内のホテルでのパーティーでの典型であって、どこかに出かけて、その地方の名産をご用意いただいているような場合には、よろこんで食べる。つまり、原理原則は箇条書きできるようなものではなく、その場で判断することなのだろう。
そんなことが、みんながタンドリーチキンをうまそうに食べているのを見ながら、ビールを飲んだその刹那に思い浮かんだ。
杜子春のまどろみは人生の至るところにある。
8月 18, 2011 at 07:05 午前 | Permalink
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