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2011/08/28

記憶の迷宮の中から糸をたぐり寄せる

日本テレビ。
高校生クイズ大会の決勝。

予選、準々決勝、準決勝と駒を進めてきた高校生クイズも、いよいよ大詰め。

早押しクイズや、記述式の回答など、さまざまなクイズを解いてきた後の決勝は、「現役東大生正解率1%以下」の超難問に、一分間で回答する。

決勝のクイズを私も彼らといっしょに考えていて、とても面白い体験をした。

通常、クイズは知っているか知らないか。前頭葉で「知っている」(Feeling Of Knowing)の感覚が生じ、側頭連合野に貯えられている情報が引き出されてくる。

Feeling Of Knowingが成立しても、思い出せないことがある。いわゆる「ど忘れ」。知人の名前や、歴代首相の名前が思い出せないケースである。

つまり、クイズに対する脳反応は、三つに分かれる。(1)Feeling of Knowingが成立し、回答できる。(2)Feeling of Knowingが成立するが、ど忘れして回答できない。(3)Feeling of Knowingが成立せず、回答できないと諦める。

「ど忘れ」している場合、それを一分間で思いだそうとするのは脳にとってかなりの負荷であり、いわば、100メートルを全力疾走しているような状態になる。

ところが、「超難問」を一分間で解こうとしている彼らは、さらに高度なことをやっていた。つまり、かすかに「Feeling of Knowing」にもならないような曖昧な感覚を頼りにして、何とか記憶を引きだそうとしていたのである。

知っているか知らないかさえも、わからない問題。しかし、かつてどこかで接したことのある情報かもしれない。そのような時に、はっきりと「これは知っている」というようなかたちでFeeling of Knowingが成立しなくても、切れそうで切れない「記憶の糸」をたどり、一分間で記憶の迷宮の中から何とか「回答」もしくは「回答らしきもの」を引き出してくる。その能力は素晴らしかった。

私も、彼らと「超難問」を一緒に考えているうちに、記憶の迷宮の中から糸をたぐり寄せるその内的感覚の一部を味わうことができた。高校生たちは、いつもそのようなトレーニングを積んでいるのだろう。

榮倉奈々さんは、「知のアスリート」たちの大活躍に目を丸くしてびっくりしていた。

その反応のやわらかさ、素直さが、榮倉さんの人気の秘密なのだと感じた。

8月 28, 2011 at 07:14 午前 |