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2011/04/03

太陽が美しいのは

 大震災が起きて以来、夏目漱石の小説にしばしば出てくる表現を借りれば「頭が悪くなって」、何も考えられなくなった。とりわけ、1月から歩きながらずっと考えてきた意識の問題について、どうしても注意を向けられないでいた。

 今、ここで生きるという課題に対して、アカデミックな探求全般が、限られた意義しか持たないように感じられていたのである。

 佐賀空港に着陸した時、私は眠っていた。タラップを通ってターミナルに行くとき、ふと左を見ると、大きな赤い夕陽が沈むところだった。
 今まで見たことがないほどに巨大に、そうして、生命そのものの色のように染まって。

 その瞬間、小林秀雄が、講演の中で、太陽が美しいのはそれ自体が美しいからだと強調していたことを思い出した。「今、ここ」にある神秘。乾ききったひび割れに水がしみ込み、うるおっていくように、忘れていた何かがよみがえってきた。

 もう一度、夕陽を見る。もう、変化は起きた。
 私は再び、考え始めることができるかもしれない。

 植田工が描いてくれた不死鳥の絵のTシャツを着て、佐賀マラソンを走る。10キロの部。全くといいほどトレーニングできていないから、練習のつもりで。

 佐賀城址の周囲は桜が咲いている。今日は、薄曇りだ。

4月 3, 2011 at 08:25 午前 |