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2010/12/12

「戦場カメラマン」渡部陽一さんの発言に、現場を踏んできた方ならではのリアリティを見た。

ぼくはテレビをほとんど見ない(見る時間がない)から、世間で大流行のことでも、知らないことがある。

しばらく前から、誰彼となく「戦場カメラマン」というので、そんな人がいるんだな、とは思っていた。どうやら、「戦場カメラマン」がテレビに出て、いろいろと面白いらしい。でも、その姿も、動くところも、声も見たことがなかった。どんな人なのかなあ、と思っていた。

先日、フジテレビの湾岸スタジオに行った。朝倉千代子さんと入り口で会って、出演者が書いてある紙を見たら、「戦場カメラマン 渡部陽一」とある。

「戦場カメラマン! 今日、いるんですか!」と思わず叫んだ。一気にスタジオが楽しみになった。この時点で、どんな姿の人なのか、まだ知らない。

そうしたら、控え室の廊下の向こうから、背が高くて、ほっそりしていて、ベレー帽をかぶった人が歩いてくる。見た瞬間、あの人が戦場カメラマンに違いない! と思った。

目が会うと、渡部さんは、深々とお辞儀をされて、「はじめまして、戦場カメラマンの渡部陽一です」と言われた。初めて声を聞いた。低い声で、ゆっくりと、とても丁寧にお話される。

スタジオで、渡部さんの、独特の話し方をたっぷり聞いた。びっくりした。みんな、笑っている。しかし、御本人は至って真面目である。

ふだんもあんな話し方をされるのかな? 休憩時間に、渡部さんとお話しした。

「今度は、いつ取材に行かれるのですか?」

「はい、来年の一月には、アフガニスタンに行こうと思っています。」

「従軍記者として行くときには、やはり、軍の指揮命令系統に入るのですか?」

「いいえ。カメラマンは、直接は上官から指示される、ということはありません。ただ、部隊に入っている以上、その行動に会わせて自分も動かなければなりません。」

「取材の途中で、軍にとって不利な情報を得てしまった場合には、どうされるのですか?」

「はい。そのことが、いつも問題になるのです。たとえば、アメリカ軍の兵士が攻撃される場面を撮影してしまった場合、そのデータが外に持ち出せるかどうか、そのことが、問題となります。」

敵を攻撃している際のことではなく、アメリカ軍の兵士の被害がより問題になる。なるほど、国内世論の動向を考えればそうなるのだろう。「戦場カメラマン」渡部陽一さんの発言に、現場を踏んできた方ならではのリアリティを見た。

それにしても、話している内容は迫真なのに、ゆったりと丁寧な、独特の口調は変わらない。そのギャップが人気の秘密なのだろう。渡部陽一さん、どうぞ、お身体にだけは気をつけてご活躍ください。

12月 12, 2010 at 09:42 午前 |