白洲家のマグマは熱い。
白洲信哉は朝一番で帰ってしまった。小林秀雄さんのお墓参りにいらした白洲明子さん、白洲千代子さんと合流して、鎌倉駅前の「ひろみ」でてんぷらを食べた。
小学館の平田久典さん、それに論文の相談に来た関根崇泰も。
「信哉は、さいなら、って帰っちゃったんですよ。」といない人の話ばかりしている。
「山の上の家にはね、一時期、大岡昇平さんの一家が住んでいらしたんですよ。」
「そんなご縁がありましたか。」
「おじいちゃん(小林秀雄さん)が、トーストを食べるとき、表、裏、それに耳のところまでバターを塗るから、大岡さんのお坊ちゃんがそれをじーっと見ていてね、家に帰ってマネをするから、困ってしまって。」
「変な文学少年がよく来てね。モオツアルトなんていうのは、オレの方がうまく書ける、なんて気炎を上げて。朝見ると、よく庭のところで寝ていたりしました。気付くと、石垣のところに絵を並べていることもあって。学校にいけなくて、仕方がないから巡査の方を呼んだら、何時間も絵の説明をしていました。」
文士が文士らしかった頃の話はいくら聞いても興趣が尽きない。
さて、何を食べようと思ってメニューを見ると、「小林丼」というのがある。小林秀雄さんがお好きだったものばかり。白身魚、穴子、かき揚げ。
「私は健康な小津丼の方にするわ。」
小津安二郎さんの好物は、白身魚、海老、野菜天。
私と平田さんは、小林丼に即決した。
信哉は怒りっぽい、という話になって、しばらく盛り上がっていたら、「私たちも怒るわよ」と明子さんと千代子さん。
「そうですか、まだ怒ったところを見ていないですが。」
白洲家のマグマは熱い。
「そんなことがないから。信哉には、いつも怒っているわよ。」
そんな信哉が、木村秋則さんのリンゴは美味しかったという。「果物嫌いが言うのですから確かです。」と信哉が言うのだから、確かです。
12月 31, 2010 at 01:34 午後 | Permalink
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