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2010/11/28

ワゴンタクシーの座席で、コンビニ袋に包まれた下着をまくらにして、コートをはおり、寝転がって星空を見ている。

京都。

相国寺の承天閣美術館で、伊藤若冲の『動植綵絵』中、「雪中金鶏」図の精巧なレプリカを前に、若冲について、有馬頼底館長について、そして京都についてお話する。

素敵な時間となりました。毎日放送の本郷義浩さん、ありがとうございました!

紅葉で、大変な人出。空いている道を選んで移動する。
京都駅の近くにある、PHP研究所京都本部。島泰幸さんが、浮かぬ顔をしている。

「実はですね、茂木さん」
「はい」
「北海道地方が、明日の朝にかけて、低気圧が通過して暴風になるかもしれない、そうすると、稚内への飛行機が飛ばないかもしれないのです。」
「はい」
「なので、今日、夜、千歳についたら、そのまま車で稚内まで移動することになりました。」
「!」
「すみません」
「飛行機は何時に着きますか?」
「夜の9時40分です。」
「稚内には、何時頃着きますか?」
「午前3時30分くらいには着くのではないかと思います。」
「ひええ!」

ブリザードになるかもしれない、そんな情報も入る。とにかく、稚内に行かねばならぬ。

島さんと二人で、「はるか」にて関西空港に移動する。暴風雪の中での移動になるかもしれぬ。なかば無意識のうちに身構え、準備をしようとしている自分がいる。

「トンカツ食べましょう!」

チェックインをした後、ブリザードに備えて腹ごしらえをしようと思った。生ビール。しばらく考えたが、ヒレではなくロースにした。冬眠前に、脂肪をたくわえる熊の気分である。島さんはヒレ。

千歳空港で寺田昭一氏が合流。これからワゴンタクシーに乗って、一路稚内を目指す。運転手さんも、ご苦労さま。
座席にすわって、コートを着て、下着の入ったコンビニの袋をまくらにして寝転がった。

はっと気付くと、車が停まった。道の駅。暗がりに白い線が見える。海の近くらしい。「おびら鰊番屋」という文字。トイレに行き、再び走り始める。時刻は午前0時過ぎ。

まだ嵐にはなっていない。人生、どんなことも、思ったよりはひどくならないものだな。

寝転がる。周囲は真っ暗。車は走る。ガラスの向こうに、奇蹟が広がっていた。きれいな星空。オリオンがくっきり見える。そうして、冴え冴えとした半月。宇宙と一体となる。

ワゴンタクシーの座席で、コンビニ袋に包まれた下着をまくらにして、コートをはおり、寝転がって星空を見ている。何万光年もかけて届いた星が、脳髄に刺激を与えて、私の一部になる。私は、稚内に向かっている。美しいものは、不意打ちで訪れる。ブリザードの中、さびしくみじめな思いで移動し続けることを想像していたけれども、そこにあったのは人生の浄化であった。

ホテルに着く。運転手さん、本当にお疲れさま! 握手をして、それからポケットの中にあったフリスクを差し上げる。部屋に上がる。午前2時30分。もうどこも開いていない。自販機を見つけ、サッポロクラシックを飲む。空を見上げたら、もう雲一杯の様子だった。あの星空は一期一会だったのだろう。夢の中で、もう一度。

11月 28, 2010 at 11:02 午前 |