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2010/11/30

スタジオがなくなって、ずいぶんやり方も変わりました。ぼくはねえ、月曜からずっと、編集室にこもって、ずっと編集しているんですよ。

午後11時頃、タクシーでNHKの西口に降り立った。運転手さんが「中に入りましょうか」というから、「いや、信号のところでいいです」と言った。

コンビニの横を抜けて、暗い細い道を行く。自分の身体の一部と言ってもいいくらい、よく知った道。

「S」に入って、パソコンを取りだし、タイプし始めようとしたら、店のガラス窓の外を有吉伸人さんが歩いてくるのが見えた。『プロフェッショナル 仕事の流儀』の放送対応を終えて、やってきた有吉さん。ぼくが座っているのを見ると、小走りに来た。別に走らなくてもいいのに、イノシシのように走る有吉さん。

「茂木さん、会うの久しぶりですね。いつからでしょう」と有吉さんが言う。「有吉さん、最近どうですか?」「いやあ、何かねえ、人生のイベントが全部もう済んでしまったような気がして、さびしい気持ちがありますよ。」「いや、まだまだこれから何があるかわからないですよ。」「そうかなあ」と言って、有吉さんはビールを飲んだ。

「番組、好調ですね! ツイッターのフォローワー数も多いし」「いや、茂木さんのお蔭で随分増えましたよ。」「ぼくだけじゃない。それだけ、番組に強いものがあるんでしょう。」


有吉さんに、最近の番組の様子を聞く。「スタジオがなくなって、ずいぶんやり方も変わりました。ぼくはねえ、月曜からずっと、編集室にこもって、ずっと編集しているんですよ。八〇〇メートルを走っているようなもので、無酸素で運動しているようなもの。一番変わったのはねえ、ゲストの方に会わなくなった、ということですね。」
「あっ、そうか、スタジオがないから、有吉さんがゲストに会うことがなくなちゃったんだ!」

「そうなんですよ。全く別の番組を立ち上げる、というような気持ちで、まあお祭り騒ぎで、ずっとみんなで走っているのですが、須藤なんかは、そんなのを脇で見ていて、自分がそこにいないのは、なんとなくさびしいな、なんて思うところもあるみたいです。でも、須藤が手伝っている小山の『ドラクロワ』も凄い。女性をわしづかみにする、ということを目指して、成功している。一度だけど、『プロフェッショナル』よりも視聴率が良かったことがあったんですよ。」

「えっ、本当ですか?」

「その時ねえ、西口で、須藤に合って、須藤くんもまあ大変だろうけども、がんばってくれよ、と言ったんですが、その上からの目線を神さまが見ていて、逆転したんでしょうね。はははは。」

「でも、番組好調で良かったですね!」

「いろいろ模索しながら、一生懸命やっています。茂木さんのツイッター見ているから、久しぶりという感じもしないけれども。でも、茂木さんのツイッターを見ていて思うのは、茂木さん随分自由に発言するようになったなあと思って。これまでは、随分重く、不自由な思いをさせていたのだろうと思って、申し訳ないと感じる部分もあります。」

「ははは。やっぱり、NHKの番組のキャスターをやっていると思うと、いろいろなことについての発言を、知らずしらずのうちに抑えていた側面はあるのかもしれません。でも、とっても楽しかったですよ!」

「あっという間の4年3ヶ月でしたねえ。」

あの頃、毎週火曜日に打ち合わせがあって、木曜日が収録。収録の後は、ゲストの方とお話しする。そんなリズムで、ずっと4年3ヶ月やっていた。

ちょうど、大学の学部を卒業するのと同じ時間だった、ということになる。

『プロフェッショナル 仕事の流儀』の時間は、今でも濃厚に流れている。


なつかしい、『プロフェッショナル 仕事の流儀』打ち合わせ室での有吉伸人さん。

11月 30, 2010 at 08:33 午前 |