連続ツイート ケンブリッジ
ケン(1)はじめてケンブリッジに行ったときは、おどろいた。カレッジのすぐ横に緑があって、牛が歩いている。実はここは牧場でもあるのだと聞いて、そんなものかと思った。
ケン(2)ケンブリッジから隣り村のグランチェスターには、30分くらいで歩ける緑が広がっている。そのすぐ近くのフランス人の家に下宿した。朝、牧場を走る。チューリングも散策したというその緑の中を、風を受けて走った。
ケン(3)トリニティ・カレッジの緑も、また美しい。聞くと、専門の庭師が30人もいるのだという。学問を行うところは美しくなければならない。藤原正彦さんの言われることが、真実だと感じた。
ケン(4)ケム川を最初に眺めたとき、その流れがゆったりとして、穏やかなのに驚いた。川岸の緑へのつながり方が、緩慢として優美である。ケム川のほとりを歩く時間が、至上のよろこびとなった。
ケン(5)ケンブリッジの中心街からすぐのところに、ジーザス・グリーンやパーカーズ・ピースなどの広大な緑地がある。大きな樹木が林立しているその道を歩くのが好きで、よく散策した。散策するにつれて、かえって狂気のようなものがこみあげてきた。
ケン(6)思考とはつまり内面の波乱である。ケンブリッジのおだやかで美しい緑が、平和的作用とともに内面の狂気を促す。あのようなかたちで自然を活かすその技法が、800年の歴史の中で育まれてきたのだろう。
ケン(7)チューリングがヴィトゲンシュタインの内面の疾走が、外部の「緑の平和」と共存する。ケンブリッジで過ごした日々において、そんな間合いをはっきりとつかんだように思った。その感触が忘れがたい。
ケン(8)人は、ある内的契機を掴みさえすれば、どんな場所にいてもその脈絡を失うことはない。田舎が何もなくて退屈だという人は、その契機をつかんでいない。ケンブリッジには学問以外には緑しかないが、ずっと頭の中にジャズが流れている、そんな生命のリズムがある。
ケン(9)ニュートンが、緑の中でぼうっとしているうちにインスピレーションを得たというのは本当だろう。りんごは、一つの点に過ぎない。ニュートンの狂気を育んだのは、平和で穏やかな緑の奔流だった。
以上、ケンブリッジについての連続ツイートでした。
(2010年10月8日、http://twitter.com/kenichiromogiにてツイート)
10月 25, 2010 at 08:19 午前 | Permalink
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