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2010/10/01

連続ツイート 「特殊」

特殊(1)先日来日したマイケル・サンデルさんとお話したとき、とても感動した瞬間があった。その瞬間は、サンデルさんが中国で講演したときのことをうかがった際に訪れた。

特殊(2)サンデルさんのJusticeは、カントやベンサム、ミルなどの思想家を参照しつつ、人間にとって「正義」とは何かということを普遍的な言語で語る。「効用」などの概念を通して「真理」に迫るその姿勢は、自然科学とも通底し、大いに共鳴、共感できる。

特殊(3)一方、世界には、「正義」というような普遍的概念と無関係に、いわばむき出しの欲動に支配されているかに見える国がある。昨今の中国がそうである。中国が経済事犯や麻薬所持者を死刑にする時、そこに「正義」についての深刻かつ真摯な検討は存在するのか? 中国特殊論が台頭する。

特殊(4)ぼくは、サンデルさんの普遍的アプローチに共感しつつ、それが、中国のような「特殊」な文化で通用するのかどうか、懸念した。そこで、サンデルさんに、「中国での反応はいかがでしたか?」とそれとなく聞いたのである。サンデルさんも、私の質問の含意は伝わっていたと思う。

特殊(5)サンデルさんの答えは、意外で、感動的なものだった。サンデルさんは、中国が特殊であるとか、そのようなことは一切言わなかった。「北京の学生たちと、熱く真摯な対話をしました」、それだけのことをサンデルさんは言った。まっすぐに伸ばした上半身は、揺るぎなかった。

特殊(6)相手が特殊だと思った瞬間に、もはやコミュニケーションは断念される。自らの信じるプリンシプルを伝えるよりは、折衝や妥協や根回しで懐柔しようとする。しかし、そこで失われるものは、一体何か?

特殊(7)相手がどのような人であれ、国であれ、「特殊」であるという認識を壁にせず、あくまでも自分が真理、正当と信じることを粘り強く伝え、説得し続ける。サンデルさんの態度に、私は、忘れかけていた何かを思い出させられた。

特殊(8)理想はこうだけど、社会の実際はああだから、仕方がないという人がいる。それで諦めてしまっては、自分の中の理想は消える。諦めてはいけない。「特殊」というラベルで、対象と自分の間に壁をつくってしまってはいけないのだ。

特殊(9)もちろん、理想は一つではないかもしれない。人の数だけ理想もあるかもしれぬ。自分の理性と良心に照らして、腑に落ちる理想は、いわば自分の身体と同じ。自分が引き受ける以外に、誰が引き受けるというのか。引き受けよう。

以上、「特殊」についての連続ツイートでした。

(2010年9月28日、http://twitter.com/kenichiromogiにてツイート)

10月 1, 2010 at 08:22 午前 |