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2010/09/20

連続ツイート 国境

国境(1)関係性を記述する法則は、たくさんの事例を集めて統計的に見ないとわからない。それにもかかわらず、私たちは往々にして目の前の特定の二項間関係に目を奪われてしまう。

国境(2)国際関係もそうで、特定の二国間関係にだけ注目していると、歴史的事実、両国のメディアの言論、政治家の発言のディテールに目をとらわれて、そもそも国際関係でどのような事象が起こりうるのかという統計的法則性に気付かぬことがある。

国境(3)日本は、近隣諸国との間に領土問題を抱えている。これらの問題の具体的詳細を追うことはもちろん大切だが、同時に、そもそも領土問題とは何かという統計的視点も必要である。

国境(4)世界の領土問題のリスト(http://bit.ly/9J7tTt)を見ればわかるように、領土問題というのは、特定の二国関係に固有の問題として生じるのではない。ある国が特段の悪意を持っているから領土問題が生まれるのではない。「雨後の竹の子」のように至るところに生じる。

国境(5)任意の二国関係をとった時に、そこに何らかの領土問題が存在している確率は高い。世界の領土問題の所在を客観的、統計的に見れば、それはつまり、そもそも国家というものが土地を領有するという慣習に内在した「脆弱性」であることが見えてくる。

国境(6)たとえば、ヨーロッパにおける領土問題の分布マップ(http://bit.ly/9IBvM6)を見ると、領土問題というものが、特定の国家の悪意や怠慢によるものというよりは、ある統計的プロセスを通して生まれてくるということがよくわかる。

国境(7)数学では、ある問題に取り組む時に、それをより一般化した問題にいったん拡張しておいて、その上で解を見つけ、特定の問題に戻すということがよく行われる。国境問題にも、同じようなアプローチが必要だと考える。

国境(8)国境問題の本質は、二国間の境界を定める「ゲーム」を定式化し、そこに生じる偶有性の構造についての何らかの「モデル」を立てることによって、はじめて見えてくるだろう。そのような理論的、実証的仕事が持つ意義は大きい。

以上、「国境」の問題についての連続ツイートでした。

(2010年8月11日、http://twitter.com/kenichiromogiにてツイート)

9月 20, 2010 at 12:44 午後 |