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2010/09/12

連続ツイート 典型

典型(1)ツイッター上のやりとりで、「医者などの信用されるべき職業は黒髪であるのが当たり前」とか、「日本人なのだから、髪の毛は黒くて当然」などという人たちがいるのを見て、本当に愕然とした。「均質性」を暗黙のうちに前提として疑わない。病は深いと感じた。

典型(2)「典型的な日本人」として、髪の毛が黒くて、皮膚が「肌色」の人を思い浮かべる。「基本」としてはそれで良いとして、そのようなイメージを他人に押しつけることが、いかに抑圧的なことか、気付かずにいる人がいるとは、真に衝撃的なことである。

典型(3)20歳を過ぎた頃、「日米学生会議」でアメリカを訪れた。日本側は、事前に会合を重ねて入念に準備をしたが、アメリカ側は国土が広く、当時はインターネットもなかったため、会議開始の前日にしか会えなかったらしい。

典型(4)ところが、初日の夜のお互いの「演し物」で、入念に準備したはずの日本側よりも、即興に近い形でやったアメリカ側の方が、見ていて面白かった。アメリカ人の瞬発力と、エンターティンメントに関する感性を思い知らされた。

典型(5)日米学生会議の初日の夜の演し物で、今でも記憶に残っているのが、「典型的なアメリカ人」(Typical American)である。

典型(6)一人ひとりが自己紹介する。そして、最後に、「私は典型的なアメリカ人です」(I am a typical American)という一言をつけて終わる。

典型(7)「私の父はフランスから来て、私の母はロシアから来ました。二人はニューヨークで恋に落ち、結婚しました。私は典型的なアメリカ人です。」

典型(8)「私の祖先は、イタリアから来て、ずっとシカゴに住んでいました。父の代になって、フロリダに移住し、そこで韓国から来た留学生だった母と知り合いました。私は典型的なアメリカ人です。」

典型(9)「私の父方の祖父と祖母は、いっしょにドイツから移民して来ました。母方の両親は、ロシアから来たユダヤ人です。私は典型的なアメリカ人です。」

典型(10)私の両親の祖先は、どちらも、アフリカから連れて来られた奴隷でした。解放されて、努力し、弁護士がたくさん輩出する家系になりました。私は典型的なアメリカ人です。

典型(11)私の祖先は、1800年初頭にアイルランドから移民してきて、それ以来ずっとニューイングランドに住んでいました。私は典型的なアメリカ人です。

典型(12)めくるめくような多様なバックグランドを語り、その後で、「私は典型的なアメリカ人です」と付け加える。アメリカ社会の多様性と、誰もが「典型的なアメリカ人です」と認め合う大らかさ。アメリカという国の魅力を強烈に印象付ける演し物だった。

典型(13)それに比べて、日本人はどうか。日本人は均質であるという思い込みが、少数派に対して抑圧的に働くだけでなく、グローバル化する世界において、日本の競争力を奪う、意味のない制約になっている。

典型(14)グローバル化の流れは必至である。「私は典型的な日本人です」という言葉を、多様な意味でとらえる。そんなことができる時代が、すぐそこに来ている。

典型(15)「私の母は、熊本から東京に出てきました。父は、北海道から大阪に働きに出て、旅先の東京で母と知り合いました。私は典型的な日本人です。」

典型(16)「私の祖先は、朝鮮半島から日本にやってきた職人でした。京都の近くに住んでいて、代々細工ものを作っていました。私は典型的な日本人です。」

典型(17)私の両親は、ベトナムから難民としてやってきて、日本に住み、苦労して働いて、地域社会に溶け込みました。私は典型的な日本人です。

典型(18)私の父は、マンガに惹かれてフランスから東京に来て、秋葉原で母と知り合って結婚しました。私の父方の祖父、祖母は、リヨンで精肉店を営んでいます。私は典型的な日本人です。

典型(19)「私は典型的な日本人です」という言葉を、多様な意味でとらえることができるようになってこそ初めて、日本はグローバル化する21世紀にふさわしい活気あふれる国になるのだろう。

以上、「典型的な日本人」についての、連続ツイートでした。

(2010年9月11日、http://twitter.com/kenichiromogiにてツイート)

9月 12, 2010 at 07:46 午前 |