『秋刀魚の味』
私が、今までで一番多く、何回も見た映画と言えば、間違いなく小津安二郎監督の『秋刀魚の味』である。おそらく、今までに数十回は見ているだろう。
私と同じように、この映画を繰り返し見ている人を、私は少なくとも二人知っている。すなわち、保坂和志さんと、内田樹さんである。
私が一番好きな映画監督が、小津安二郎であるということはもう絶対に動かせない事実である。日本映画に、というよりも世界映画の中に、小津安二郎がいて本当に良かったと思う。
小津さんは、1963年12月12日、ちょうど満60歳の時に亡くなった。その前年、私が生まれた年に公開されたのが『秋刀魚の味』である。小津さんの遺作となってしまった。
『秋刀魚の味』の予告編と、最後のシーン。
小津さんは、いくつかの作品で、完璧な紳士が最後に崩壊するその有り様を描いた。『秋刀魚の味』の笠智衆も、愛情に満ち、円熟した理想的な父であったが、娘を嫁がせたその夜に崩壊する。小津さんは、人間というものは孤独で、さびしいもので、それでも生きていくのだという真実を描きたかったのだろう。本当の芸術というのは、よく炊けたお豆のようにほっこりとしているものだなあ。
http://bit.ly/9Vi9Gv
『秋刀魚の味』予告編
http://bit.ly/aA89L2
『秋刀魚の味』ラストシーン
8月 15, 2010 at 07:11 午前 | Permalink
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