初代大統領ジョージ・ワシントンの子孫は、どこで何をしているのか?
江戸時代には、身分制度が現代よりもきびしい形で存在した。福澤諭吉が、「門閥制度は親の敵でござる」という激しい言葉を残したように、親がどのような身分で、何をする人かということで、本人に何ができるかということもほぼ自動的に決まってしまっていた。
志があり、学問も熱心に修めたのに、生まれのために取りたてられることのなかった自分の父親を思い、「門閥制度は親の敵でござる」と激した福澤諭吉の真情。咸臨丸に乗ってアメリカに渡った際、福澤諭吉は周囲のアメリカ人に「初代大統領ジョージ・ワシントンの子孫は、どこで何をしているのか?」と聞いた。ところが、誰も知らないし、興味も持っていない。福澤諭吉は、大いに驚いた。
日本では、初代将軍の徳川家康の子孫がどこで何をしているのか、誰でも知っている。江戸で将軍をやっている。しかし、アメリカでは、初代大統領の子孫に、特別なことは何もないらしい。このエピソードで、福澤は、当時のアメリカが、日本とは全く異なる成り立ちの国であることを悟るのである。
福澤諭吉は、帰国後、『学問のすゝめ』、『西洋事情』、『文明論之概略』などの多くの啓蒙書を世に出す。一人の人間としてこの世界に立つ「独立自尊」の理想を説く。まさに怒濤のような福澤諭吉の言論活動の背後には、当時の日本社会の後進性の認識と、このままではダメであるという強い危機感があった。
時が経て、「独立自尊」の理想が日本で行われているかといえば、はなはだ疑わしい。日本は、相変わらず、世界のさまざまな国とは異なる原理で動く、「不思議な社会」となっている。福澤が危機感を持った日本の「後進性」は、依然として残っているのだ。
福澤諭吉
7月 4, 2010 at 07:27 午前 | Permalink
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