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2010/07/27

モンスターの正体

 日本を今覆っている不安な気分は、日本人が自分たちの置かれている状況を直視していないということに起因する。日本という国を衰退させているものの正体がよくわからないままに、今までの惰性で生きようとしている。だから、未来に希望を持ちようがない。

 このような時には、危機をもたらしているものから逃げるのではなく、むしろそれを正面から直視しなければならない。直視することで、乗り切る方法も見えてくる。むしろ、やりようがあるのではないかと希望もわきあがる。

 人間は、自分を脅かすものの正体がわからない時に、最も不安を感じる。ホラー映画の一場面。暗闇の中を歩いている時に、不気味な気配がする。恐怖感をあおるような音楽が流れて、引きつったような被害者の表情が大写しになる。映画を観る者の心の中でも、不安は最高潮に達する。

 ついには、モンスターが姿を現す。牙をむきだし、目が血走り、鋭い爪を持つ恐ろしいその姿。観客は、思わず悲鳴を上げる。

 しかし、ここで、実は興味深い現象が起こっている。心の中にある不安のレベルは、モンスターの姿かたちが見えることで、むしろ低下している。それがどんなに恐ろしい姿であっても、何かわからない状態よりは、ましである。自らの生命を脅かすモンスターがいかに暴虐な姿をしているとしても、具体的にそれが見えてしまえば、対処法を考えることもできる。逃げ方も浮かんでくる。モンスターは、その正体がわからない時に、最も恐ろしいのである。

 ホラー映画の文法は、私たちに貴重な教訓を与えてくれる。どんなに恐ろしくても、目を閉じてしまってはいけない。顔を覆っている手を外して、モンスターの姿を直視しなければならない。実際にその正体を見極めれば、モンスターが実はそれほど恐ろしいものではないということが明らかになるだろう。モンスターの正体さえわかってしまえば、それは、私たちを脅かすどころか、ちゃんと向き合って対応すれば私たちを成長させ、大いなる恵みをもたらしてくれるものだということが判るはずなのだ。

7月 27, 2010 at 07:19 午前 |