脱藩後の生活
組織や肩書きに頼らない「脱藩」生活を目指すとして、果たして、「脱藩後」はどのように自分の生活を支えていけば良いのだろうか?
小学校の時から「受験戦争」に参加し、見事「一流大学」に合格し、大学の3年から就職活動をして、「正社員」として採用される。履歴書に「穴」を開けることもなく、従順に社会のシステムに従う。そのような「勝ち組」の方程式が、ガラパゴス化した日本全体のパイが少なくなることによって次第に先細りになっているとは良いながら、依然としてそれなりに機能していることは事実である。
だからこそ、そのようなシステム内にいる人たちには、驚くほど危機感がない。たとえば、新聞や
テレビなどのマスメディアで報じられる内容は、どちらかと言えばシステムに乗った人たちを「勝ち組」、乗れなかった人を「負け組」とする定型に則ったもので、日本の「今、ここにある危機」に対する感度が鈍い。考えてみれば、マスメディアで働く人たちは、その殆どが「護送船団方式」の日本のシステムに乗ってきてここに至っているから、それ以上期待するのは難しいということなのだろう。
日本の未来を切り開くためには、組織や肩書きに縛られずに、自分自身の「内在化」された「安全基地」をもとに未知の領域を切り開いていく人たちが出ることが不可欠である。しかし、そのような「脱藩者」たちは、一体どのようにして自分の生活を支えていけば良いのだろうか。
賞味期限が切れた日本の「システム」に乗ることを潔しとしない人たちが、具体的に、どのようにして「脱藩後の生活」を生きていけばよいのか、そのことについて以下で考えていきたい。脱藩者がちゃんと生きることができる、いわば「脱藩の生態系」が大きくならなければ、脱藩者たちも、日本の未来も報われないだろう。
2002年に発売されたダニエル・ピンクの『フリー・エージェント・ネーション』では、2500万人以上のアメリカ人が「自分自身のために働く」現状を紹介する。「Fortune 500」にリストされている大企業で働く人は、アメリカ人の10人に1人以下に過ぎない。インターネットに象徴されるアメリカ発の新しい文明の力は、組織や肩書きに頼るのではなく、自分自身で考え、行動し、働く多くのアメリカ人たちによって支えられている。
以下では、「脱藩後」の生活を支える、次のようなヒントについて検討したい。すなわち、安全基地、ポートフォリオ、ネットワーク利他性、「グーグル時価総額」、瞬間溶解、セレンディピティ、そして「キャピタル」である。
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「グーグル時価総額」とは、自分自身の存在の、ネット上での価値を高めることである。自己紹介する時に、「名刺」を渡すというのが今までの日本社会のやり方であった。そこで重要になるのは、「組織」や「肩書き」であり、そのことがひとりの人の価値を決めていた。
これからの時代に求められるのは、特定の組織、一つの肩書きに自分の存在を依拠っせるのではなく、ネットワークの中でのさまざまな結びつきを通して自身の価値を高めようとする人である。
初対面の時に、連絡先などの自分についての基本的な情報が書かれた名刺を渡す。そこには、たまたま、組織や肩書きが書かれていることはあるだろう。しかし、それ以上は、「グーグルで検索してください」と言えるような人が、これからの時代にふさわしい。その人に関する情報、その人の過去の事蹟、仕事、興味、人間関係に関する情報が、インターネットという「偶有性の海」に遍在している。そのような存在こそが、これからの「脱藩者の時代」では輝きを増すのである。
7月 11, 2010 at 09:48 午前 | Permalink
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