ものづくり2.0
日本の進むべき方向として、「ものづくり」ということがしばしば言われる。
さまざまな創意工夫を凝らし、品質を向上させる。「職人」の魂で、良いものをつくる。
そのような「ものづくり」が戦後の日本の復興を支え、日本人の誇りとなってきたことは事実である。
時代が変わり、「ものづくり」に必要なことが変化してきた。
日本人のアイデンティティとしての「ものづくり」もまた、進化し、前に進まなければならない。
iPadやAmazon Kindleのような、昨今革新的と見なされる製品は、ハードとしてすぐれているだけでなく、アプリをネット経由でダウンロードしたり、コンテンツを簡単に買うことができたりといった、情報ネットワークとの結合で付加価値が生まれている。
そして、グローバリズムの時代において、情報ネットワークとは、すなわち、日本だけではなく世界規模のものとならざるを得ない。
すぐれた品質のものをつくる日本の能力は、素晴らしいもので、これからも育んでいくべきであるが、そのものづくりが、情報ネットワーク構築の卓越と結びついて、いわば「ものづくり2.0」にならなければ、日本経済は輝き続けることができない。
そうして、日本人のマインドセットにとって、どううやらグローバルな情報ネットワーク構築のような課題が苦手らしい、ということが明らかになりつつある。
ネットワークに必然的に伴う偶有性への適応度を上げることなしに、日本のものづくりが輝くことは難しい。グローバルなネットワーク性への感度を上げることなく、今までのような「ものづくり」精神を強調し続けることは、日本にとって大きなリスクとなる。
もちろん、現場で創意工夫をし、技術を高めていく「ものづくり」の精神はこれからも大切である。
その一方で、自らグローバルなネットワークという偶有性の大海に乗り出していこうという人が現れてこそ初めて、日本の「ものづくり」の卓越性を保つことができる。
6月 6, 2010 at 09:14 午後 | Permalink
最近のコメント