« ○○は脳に良いですか? | トップページ | 脳のトリセツ 「記憶力の世界王者」を訪ねる »

2010/05/28

『文明の星時間』 キャッチ22

サンデー毎日連載

茂木健一郎  
『文明の星時間』 第115回  キャッチ22

サンデー毎日 2010年6月6日号

http://mainichi.jp/enta/book/sunday/ 

抜粋

 『キャッチ22』は、アメリカの小説家ジョセフ・ヘラーが1961年に発表した作品。ヨーロッパ戦線で闘うアメリカ兵を主人公に、戦場の不条理を描いている。
 小説の中で、主人公のパイロットが置かれたジレンマとは、次のようなものだった。戦争の狂気から逃れ、命を存えるためには、「精神異常」だと認定されれば良い。そのためには、軍医に精神の不調を訴え出なければならない。しかし、自分の精神が不調だと申し出ることができる者は、まだ「理性」を失っていないと判断され、軍規により、精神異常とは認められない。結局、どのようにしても、戦場を逃れる術はない。
 第二次大戦の惨劇の記憶がまだ鮮明な頃に世に送り出された小説。やがて、「キャッチ22」というタイトルは、一般に、与えられた選択肢の中のどれを選んでも、必ずや困った状況に陥るという不条理な状況を表現する言葉となった。
 もともと、英語の「キャッチ」には、思いがけない躓きの原因や、隠された罠というような意味がある。たとえば、すばらしい機能を持った新製品が、驚くほど安い価格で売り出されるというニュースに対して、「何かキャッチがあるんじゃないか」というような表現が使われる。
 「キャッチ22」ほどの極限状況でなくても、私たちは、生きていく中で、さまざまな「キャッチ」に出会わざるを得ない。そのような状況にいったん出会ってしまえば、どれほどすぐれた資質の者でも、簡単な解決を見いだすのは難しくなる。
(中略)
 この問題について、鳩山首相の政権運営がベストだったとは思わない。その一方で、個人の無能力にすべてを帰すことができるとも考えない。誰がやっても、おそらくは解決が難しい。普天間基地問題は、鳩山政権にとっての「キャッチ22」となった。
 「キャッチ22」の状況において、人はどうするか。努力は放棄するべきではないが、簡単には解決策は見つからないことも確かである。そのような時は、結局は、自分自身に、そして基本となる世界観、考え方に立ち戻るしかない。


全文は「サンデー毎日」でお読みください。


イラスト 谷山彩子

本連載をまとめた
『偉人たちの脳 文明の星時間』(毎日新聞社)
好評発売中です。

連載をまとめた本の第二弾『文明の星時間』が発売されました!

中也と秀雄/ルターからバッハへ/白洲次郎の眼光/ショルティへの手紙/松阪の一夜/ボーア・アインシュタイン論争/ヒギンズ教授の奇癖/鼻行類と先生/漱石と寅彦/孔子の矜恃/楊貴妃の光/西田学派/ハワイ・マレー沖海戦/「サスケ」の想像力/コジマの献身/八百屋お七/軽蔑されたワイルド/オバマ氏のノーベル平和賞/キャピタリズム

など、盛りだくさんの内容です。

amazon

5月 28, 2010 at 07:00 午前 |