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2010/05/12

イギリス新首相誕生と、「お茶の間の真ん中にあるべきもの」

 ラーメン二郎を「完食」して、その結果、思考能力を奪われたせいか、夜、めずらしく早く眠ってしまった。
 (ラーメン二郎の顛末については、私のツイッターアカウントを参照ください)

http://twitter.com/kenichiromogi 


 午前3時過ぎに目が覚めた。ラップトップで、BBCのネットにつなぐと、イギリスの政局について、生放送を見ることができた。

 ちょうど、保守党と自由民主党の連立協議が大詰めに差し掛かり、劇的な変化が起きるところを、BBCの報道特別番組が時々刻々と報じている。

 ゴードン・ブラウンがダウニング街10番の前に出てきて「辞任」を表明し、そのままジャガーに乗ってバッキンガム宮殿に行く。

 エリザベス女王に辞任を申し出、対抗政党の保守党の党首に組閣を要請するのが適切であると助言する。

 ゴードン・ブラウンは、バッキンガム宮殿を出た後、労働党本部に向かい、スタッフたちに感謝の言葉を述べる。
 
 その頃、ウェストミンスターの国会議事堂では、保守党党首デイヴィド・キャメロンが銀色のジャガーに乗って出発しようとしている。

 キャメロンを乗せた車が、バッキンガム宮殿に向かっていく。

 女王から、組閣を要請されて、それを受諾し、首相になる「kiss hands」と呼ばれる儀式のためである。

 「本当に手にキスをするのか」「いや、これはあくまでも儀礼を表す言葉であり、昔はそうしていたかもしれないけれども、今は握手をするだけである」などとBBCの解説者と、ゲストの国会議員が話している。
 
 エリザベス女王としては、その君臨している間に11人目の首相だそうである。

 キャメロンを乗せた銀色のジャガーが、バッキンガム宮殿に入る。女王の秘書官が迎える。キャメロンが、宮殿内に入っていく。


エリザベス女王から組閣を要請されるキャメロン新首相

 やがて、女王との会見を終えたキャメロンが、姿を表す。「新首相誕生」とのテロップが流れる。ジャガーに乗り込む時に、報道陣から「首相、手を挙げてください」と声が飛ぶ。キャメロンが挙手すると、「ありがとう!」との声が聞こえる。

キャメロンは、ジャガーに乗ってダウニング街10番に向かう。首相官邸前では、すでに新しいスタッフが立って、新首相を迎えようとしている。

やがて、ダウニング街10番にキャメロンの車が着く。政治家として、夢に見たであろう瞬間。キャメロンは、マイクの前に立ち、短いスピーチを表明して、「10」と書かれたイギリスで最も有名な住所のドアの中へと消えていく。

 イギリスの政権交代の瞬間を、生放送で見ることなどそう滅多にある機会ではない。インターネットが発達したからこそ、日本でも見ることができる。

 いや、実に面白かった。私は、すっかり満足して、午前5時頃再び眠りについた。

 起きて、仕事をしようと思った。大画面の液晶テレビが目に入る。違和感を覚えた。

 もはや、「お茶の間」の真ん中にあるものは、従来型のテレビではなく、むしろインターネットにつながったコンピュータなのではないか。

 「放送と通信の融合」と言うけれども、もうすでに、地上派テレビを基本とするテレビの時代は、終わっているのではないか。

 もちろん、放送局がなくなるというわけではない。実際、私がネットにつないで見ていたのは、BBCの生放送だった。

 ただ、地上波のプログラムをただそのまま見ているという時間帯は、確実に激減するだろう。特に、若い世代、時代の変化に敏感な人たちの間において。

 インターネットが成熟して、放送と通信の垣根はなくなり、国境もなくなって、テレビというものの存在も、変質していく。

 お茶の間の真ん中にあるべきものは、何でしょう。

 メディアの変質が100%確信された朝だった。

5月 12, 2010 at 08:24 午前 |