デレク・パラヴィチーニと出会った瞬間
アダム・オッケルフォード(Adam Ockelford)は、ある時、ケリーという女の子にピアノ・レッスンをしていた。
そうしたら、突然、後ろから小さな男の子がぶつかってきて、アダムとケリーを突き飛ばした。男の子は、ピアノの前に陣取ると、猛然と鍵盤を弾き出した。
弾き方は、無茶苦茶だった。拳で叩いたり、肘打ちしたり、空手チョップをかましたり、あるいは鼻を打ち付けたり。
アダムは、最初は、その男の子が狂っているのだと思った。しかし、そのうち、乱雑に聞こえる音の羅列の中から、一つのメロディーが聞こえてくるのに気付いた。
ミュージカル『エヴィータ』のテーマ、『ドント・クライ・フォー・ミー・アルジェンティーナ』。
男の子の魂は、音楽を求めている。全身で音楽を必要としている。しかし、その表現の仕方がわからない。だから、ただ無茶苦茶に身体をピアノにぶつけている。
男の子は、生まれつき目が見えなかった。
アダムが、デレク・パラヴィチーニ(Derek Paravicini)と出会った瞬間である。
Adam, Derekとピアノの前で。
Adam, Derekとロンドン郊外の木立の中を歩く。
5月 5, 2010 at 02:39 午後 | Permalink
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