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2010/05/29

通年無差別採用のご提案

企業の経営というものは、徹底的な合理性を追求するべきものと考えます。

ここにおける合理性を、ある文脈に限定されたものととらえれば、その企業は文脈限定的な成功を収めることになるでしょう。一方、開放的にとらえれば、その企業はオープン・エンドな成長を遂げることができるかもしれません。

私は、新卒者、既卒者、あるいはそもそも大学を出ているかどうかを区別せず、一年のいつでも応募を受け付け、順次採用を決める「通年無差別採用」が今日の企業経営上もっとも合理的だと信じ、その採用を強くお薦めするものです。

ネットワーク化し、相互依存が高まり、偶有性が避けられない今日の世界においては、多様な人材がいることが、一つの組織の頑健さ(robustness)につながります。

人生のタイムラインは多様化しています。日本の大学を出る人だけをとろうと思えば、4月に一斉に入社すれば良いのでしょうか、世界にはさまざまな人たちがいます。6月に卒業する欧米の大学の卒業生もいるかもしれない。卒業した後、世界各地でボランティア活動をしたり、民間団体で働いたり、家庭で介護をしたり、さまざまなことをしてから、就業しようという人もいるでしょう。

これらの多様な人材を確保し、組織の頑健さを強めるためには、通年で採用することが二重の意味で合理的です。

まず第一に、大学3年の10月にエントリーを受け付け、説明会を開催し、一次、二次、三次と試験していく、という限定されたタイムラインに沿っては応募することが不可能なような、「アウトライヤー」(大勢から外れた人)を採用することができます。ネットワーク化した社会におけるイノベーションにおいては、組織の中にアウトライヤーがいることが不可欠だと言えるでしょう。

第二に、そして、これが本質的に重要と私は信じますが、企業の採用担当者のリソースをより有効に使うことができます。現状の新卒一括採用は、学生にとって大きなストレスになるだけでなく、企業の人事部の採用担当者の能力も有効に活用していないと私は考えます。

現状では、手続きがオンライン化されたこともあって、大量の申請書類が届き、それを裁くだけでも大変な労力を費やすと聞いています。本当は、人物本位で、じっくり見きわめて採用したいのに、限られたリソースしか候補者の選別に使えないため、「アウトライヤー」を採用することができない。そのようなジレンマに企業の採用担当者は陥っているのではないでしょうか。

一年中、いつでも応募を受け付け、順次審査するという政策にすれば、今までより多くの時間を使って、応募者の資質を見きわめることができます。場合によっては、一定期間試験的に採用して、その上で正式に採用するということもできるかもしれません。

iPadや、Amazon kindleのような革新的な商品、サービスを生み出すには、「横紙破り」の人材が不可欠です。大学3年の10月から、従順にエントリー、会社説明会をこなす人材だけでは、イノベーションを起こすことができません。

これからの企業経営に不可欠なユニークな人材を確保し、採用担当者の能力をより十全に活用するためにも、通年無差別採用を「明日から」実施することを、日本のすべての企業にお薦めする次第です。

5月 29, 2010 at 07:58 午前 |