人間の根本的な感情の一つは、「恐怖」である。
山下洋輔さんとお話していて、思った。人間の根本的な感情の一つは、「恐怖」である。
生まれた赤ん坊は、おぎゃあおぎゃあと泣く。初めての肺呼吸。しかし、その根底にあるのは、わけのわからない世界に産み落とされてしまったという「恐怖」でもあるのではないか。
山下さんは、素晴らしい演奏をする。満場の聴衆の前で、ピアノの鍵盤を叩き、音を奏でる。しかし、そのパフォーマンスの背後には、やはり恐怖の感情があるのではないか、と伺ったら、「そうかもしれない」と山下さんは答えた。
アメリカ人にとって、最悪の社会的状況は、聴衆の前で喋ることだそうである。学会発表での最大の恐怖は、自分がバカだと思われてしまうことである。あるいは、バカだとばれることである。
恐怖は、ネガティヴな感情のようだが、実は、それは至上のパフォーマンスを引き出す上ではどうしても必要なことなのではないか。人前で自分をさらけ出すことに恐怖も何も感じないような人は、きっと大したことができない。
恐怖の暗黒を乗り越えて、「集中しているけれどもリラックスしている」という「フロー状態」になることができる人だけが、陽光のきらめきに身を包むことができる。
人間の根本的な感情の一つは、「恐怖」である。だから、諸君、大いに恐怖したまえ。恐怖こそが、高みを目指す努力へと君たちを駆り立てることができる。
5月 18, 2010 at 06:58 午前 | Permalink
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