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2010/04/05

田森のシンデレラ

金沢に来た。田森佳秀に会った。

田森は、私の理化学研究所時代からの親友である。

田森佳秀が、いかに面白い男か、ということは、「クオリア日記 田森佳秀」で検索していただければ、いくつかひっかかってくるものと思う。

夕食をとりながら、田森の面白話をふたたび聞いた。

「北海道は、だいたい、仮装行列をやるんだけどさ」と田森。

田森のふるさとは、「人の数より牛の数の方が多い」豊頃町である。

「どんな仮装をしたの?」

「うーん。さいしょは、ロボットだったかな。あれは、あまり出来がよくなかった。小学校4年生の時だったかな。なにしろ、うちのおやじが仮装行列を実行する側で、お前やれ、って言われて、仕方がなくやったんだ。」

「なるほど、それから?」

「一番よくできたのは、シンデレラだったかな。自分は、シンデレラのスカートのところにいて。だから、すごく背の高いシンデレラなのさ。」

「ほうほう。」

「首とか手は上に乗っていて、棒で動かすんだけど。あのときは失敗したなあ。どうせ手で持っているから、っていうんで、短い長さの棒にしちゃったんだよ。」

「持っているうちに、疲れちゃったのか?」

「そうなんだよ。二時間もあったから。あの時は、きつかったなあ。本当に苦しかった。思ったより重くってさ。」

「でも、最後までやったんかい?」

「うん。苦しかった。でも、後で聞いたら、一番評判は良かったらしい。」

「賞とか出るんかい?」

「出るけど、何しろオヤジがやっているから、ぼくが賞をもらっちゃまずいっていうんで、もらわなかった。」

「惜しいね。それから、何をやった?」

「近所の子どもたちを動員して、タバコっていうのもやったな。」

「何、それ?」

「タバコの箱と、比率がちょうど同じ箱があったんだよ。それで、わざわざパンタグラフを作って、本物のタバコの箱そっくりの模様を描いたんだ。倍率は、30倍だったかな。」

「どんな銘柄?」

「セブンスターかな。」

「あれ、星のマークがたくさんあって、大変じゃないか?」

「そうなんだよ。それと、ハイライトか。」

「ハイライトは何とかなりそうだな。」

「とにかくさ、近所の子どもたちをそのタバコの箱の中に入れて、行進させるのさ。」

「それは、いつくらいのこと?」

「子どもたちに命令するようになっているんだから、あれは最後の方じゃないかな。中学生くらいだと思うよ。それから、高校は帯広に出てしまったから。」

私が田森の「おもしろ話」を愛するのは、そこに、「自分で何でもやってみる」という精神があるからである。身体をはって何でもやってみる。面白い話の核には、本当は深い教訓があるのだろう。だからこそ、面白いのだろう。特に、田森に関する限り。


田森佳秀氏。 2009年7月。

4月 5, 2010 at 10:35 午前 |