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2010/04/30

マーマイト

朝食の時、エドと一緒になった。ドキュメンタリーにおける、カメラのフレームを揺らす手法など、さまざまな話題について議論しているうちに、「マーマイト」に話が及んだ。

「あれ、ダメなんだよなあ」と言うと、エドが、「ぼくは好きだよ。日本に一年間いた頃は、イギリスから取り寄せていたなあ。」と言う。

「そんなになつかしかったの?」

もし試すのならば、今だ! と思った。

20年前にイギリスに初めて来た時に食べて、もういやだ、と思ったマーマイト。しかし、イギリス人が、外国にいる時に一番「なつかしい」と思う食糧だというマーマイト。それを再び試すのならば、今である。

フルーツを取りに行くふりをして、マーマイトを持ってきた。

「えへへ。もって来ちゃったよ。」とエドに言う。

「どうやって食べるんだっけ?」

「トーストにつけるんだよ。」

蓋をあける。とろーっと黒い液体が見える。ナイフに乗せる。なんだか粘っこい。トーストにつけると、ねばねば抵抗感がある。

うっ。と思ったが、エドが見ている。思い切って、口に運んだ。

「・・・・・。うーむ。・・・・。そんなに、悪くないよ。」

実際、そんなに悪くなかった。イーストの独特の香りがあり、しょっぱい。酸味のようなものもある。しかし、全体として、そんなに悪くない。

「マーマイトは、徐々に好きになるものなんだよ。」とエド。

「しょっぱいな」と私。「子どもの頃から食べてたの?」

「うん。でも、うちの父親が、ある時、マーマイトは塩分が多いという記事を読んで、それからは私たちに食べさせたがらなかった。うちの父親は、そういう人だったんだ。記事を読むと、それを真面目にとってしまう・・・。」

エドの話に肯きながら、私はマーマイトをもう一つけ、もう二つけと食べた。

「これ、案外ビールと合うかもね・・・。」

二十年ぶりに、今度はなんとか好きになれそうなマーマイト。小分けになった容れ物は、ハートの形をしていた。

4月 30, 2010 at 05:14 午後 |