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2010/03/25

文明の星時間  文明のピンポン外交

文明の星時間  

サンデー毎日連載

茂木健一郎  
『文明の星時間』 第107回  文明のピンポン外交

サンデー毎日 2010年4月4日増大号

http://mainichi.jp/enta/book/sunday/ 

抜粋

 ところで、海外では、黒澤映画に描かれている侍たちは日本人の一つのシンボルのように見なされている。それは、もはや失われてしまった「かつてあった日本」かもしれない。いずれにせよ、機知に富み、勇気があり、刀一本で敵を倒す侍の姿が、日本人の一つの理想的なあり方として認識されているのである。
 まだ日本に来たことがない人々と話していて、黒澤映画を見た彼らが日本に対する募るあこがれを告白するのを何度も耳にしている。それだけ、黒澤明さんの作品が日本という国のイメージについての「宣伝大使」のような役割を果たしてくれているのだろう。
 黒澤作品に描かれた侍たちの姿が、「日本的」なものであることは論を待たない。それでは、それらのイメージが「純粋培養」されたものであるかと言えば、少し違うだろう。
 文化というものは、一つの国だけで育まれるものではない。黒澤作品は、確かに多くの国の映画人に影響を与えたかもしれない。しかし、逆に言えば、黒澤映画もまた、世界のさまざまな作品の影響を受けて成立しているのである。黒澤明監督自身が、『用心棒』は、アメリカの作家ダシール・ハメットの『血の収穫』に影響を受けたものと認めている。
 アメリカ生まれのハードボイルド小説が、侍たちを主人公にした日本映画をインスパイアする。今度は、その日本映画がマカロニ・ウェスタンの傑作に影響を与える。そのようにして、影響は文化の間を往還していく。文化は、一国だけで完結しているわけではない。そもそも、「マカロニ・ウェスタン」というジャンル自体が、イタリアで制作された西部劇という一種の混合体である。


全文は「サンデー毎日」でお読みください。

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3月 25, 2010 at 09:40 午前 |